紫陽花「花葉共ニ味ヒ苦シ」

 大きな水滴を浮かべたアジサイの葉の上を、角を出したカタツムリがゆっくり進む。立派なしま模様の殻がいかにも重そうだ。机の横にかかっているカレンダーは、おなじみの図柄だ。

▼ もっとも、ナメクジを目にすることはあっても、カタツムリはとんと見かけなくなった。そんな話をよく耳にする。今が盛りのアジサイは各地で咲き誇っているというのに。日本だけで800種類もあるカタツムリの生態は、実はまだよくわかっていない。

▼ 動ける範囲が狭いこともあって、気温が上がる一方、乾燥が進む都市部では、急激に数を減らしているという報告もある。ただ、カタツムリを見つけるには、落ち葉の下などをさがす方がいいそうだ。好物がアジサイの葉だ、という思いこみも間違っている。

▼ だったら余計に、人間が口にしていいわけがない。茨城県つくば市内の飲食店で、「鳥肉梅しそ和え」に添えられていた、アジサイの葉を食べた男女8人が、嘔吐などの症状を訴え、2人が病院で検査を受ける騒ぎがあった。

▼ アジサイの葉に含まれる「青酸配糖体」と呼ばれる有毒成分と、胃の中の消化酵素が反応してできた青酸(シアン)が原因だ。ちょうど今ごろの季節に鎌倉の飲食店で、やはり料理にあしらわれた一枝のアジサイを目にしたことがある。つくば市の店も料理に季節感を出そうとしたらしい。葉っぱだけだったら、おっちょこちょいで食い意地の張った小欄なら、シソの葉と間違えかねない。

▼ 大正9年ごろ、アメリカで数頭の牛と馬が中毒死した例がある。江戸時代の本草学(ほんぞうがく)の本は、毒草と指定していないが、「花葉共ニ味ヒ苦シ」と記している。食中毒はこれからが本番。口に入れるものには、慎重でありたい。

20/06/24 05:29

【産経抄】6月24日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/06/24 05:00】 | 自然 生活 社会 医療 | トラックバック(0) | コメント(0)
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