【主張】レアメタル 資源回収の態勢強化せよ

 自動車や携帯電話などのハイテク製品に欠かせないレアメタル(希少金属)が高騰し、調達が難しくなっている。

 中国やインドなど新興国の経済成長に伴う需要増に加え、レアメタルを産出する国が輸出規制を強化しているためだ。

 この金属は特定地域に偏在し、代替の調達先を見つけるのが難しい。政府は、権益確保に向けた資源外交を展開しているが、このままでは、日本が得意とする先端産業分野での競争も厳しい。

 他国に日本の産業の命運を握られないためには、使われなくなったハイテク機器のレアメタルを強力にリサイクル化する必要がある。官民挙げての回収技術の開発と低コストの回収ルート構築が喫緊の課題である。

 レアメタルは、埋蔵量が少なかったり、単体としての抽出が物理的に難しいプラチナやインジウム、マンガン、レアアースなどの金属の総称である。これらの金属は、わずかの量で触媒や半導体の性能がよくなるため、いまでは自動車や携帯電話、液晶ディスプレーなどには欠かせない存在になっている。

 この希少価値が、産地偏在や資源ナショナリズムと結びつくとどうなるか。中国の輸出規制はその典型的な例である。平成18年11月から、レアメタルの輸出関税を数度にわたって引き上げたため、価格高騰に拍車が掛かった。

 中国はハイブリッド車のモーターに必要なレアアースや超硬工具に欠かせないタングステンの生産で世界の90%以上のシェアを握る。輸出規制には、レアメタルを国内での需要に振り向け、ハイテク製品の輸出を戦略的に拡大しようとの狙いがある。

 しかし、中国の輸出規制に対する日本の対策は心もとない。採掘権の確保に向けアフリカ諸国などへの外交攻勢を強めているが、それほど成果は上がっていない。

 需給緩和に役立つリサイクルの現状も、個別の企業や自治体任せで戦略がない。まして、ゴミとして捨てられたパソコンや携帯電話がいつの間にか日本から中国に輸出されているようでは、無策としかいいようがない。

 資源ゴミの有効利用を徹底し、リサイクルに全力を挙げたい。家電リサイクル法の強化など打つべき手は多い。レアメタルの再利用に向けて、官民共同の対策を考える余地はまだまだある。

20/08/13 05:32

【主張】レアメタル 資源回収の態勢強化せよ

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【2008/08/13 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
餃子事件 支那政府の目線では困る

 中国製ギョーザ中毒事件に関連して、中国国内でも同様の中毒事件が起きていたことが、外交ルートを通じて7月に日本政府に伝えられていた。毒物が中国国内で混入された可能性が高いことを、ようやく中国側が認めた形だ。

 中国側は事件の原因は日本にあると言わんばかりの態度も見せてきた。その非を改め、今後は本腰を入れて捜査を行うことは当たり前である。

 納得できないのは、政府が事実を1カ月も伏せていたことだ。国民の生命にもかかわる食の安全の問題より、北京五輪を控えた中国への外交的配慮が先なのかと指弾されても仕方あるまい。

 福田康夫首相は6日の記者会見で「捜査上の問題もあるので説明するわけにはいかない」と述べ、両国間で協議が進行中であることに理解を求めた。事件後に回収されたギョーザが再び中国国内に出回ったという、常識では考えにくい点もあるが、なぜ伏せたのかなどの経緯は明らかにすべきだ。

 中国からの伝達は、7月の主要国首脳会議の直前だったという。洞爺湖サミット時、福田首相は胡錦濤主席との首脳会談で、ギョーザ事件も話し合った。しかし、公表された会談内容は両国間の捜査協力を確認し、胡主席が捜査の加速を約束した程度で、中国での事件発生という重大な事態の変化を前提としたものではなかった。

 これらは日本政府が五輪開催前に波風を立てたくないとの思惑から、国民の中国食品に対する懸念を払拭するのは後回しで良いと考えていたからではないのか。

 原因が中国国内にあることが少しでも早く特定されれば、再発防止に役立ち、消費者の安心感につながる。日本人の中国食品離れは、一連の事件の責任をあいまいにしていることなどへの不信感があることを忘れてはならない。

 この件で民主党の小沢一郎代表が「日本の国、国民の視点から政治行政が行われていない」と主張したのは、もっともである。

 野田聖子消費者行政推進担当相は「外務省と警察庁はちゃんと連携してほしい」と語った。首相が強調している消費者の目線とはどんなものか分かるよう、積極的な取り組みをみせてほしい。

 訪中する福田首相は、胡主席らとの会談で、日本国民の安心・安全をいかに守るかを具体的な形で示す責務がある。

20/08/08 05:06

【主張】ギョーザ事件 中国政府の目線では困る

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【2008/08/08 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】櫻田淳 自由貿易の「信念」振り返る夏

≪国家戦略唱えた石橋湛山≫

 昭和20年10月、石橋湛山は、ポツダム宣言受諾の結果、日本が満州・台湾・朝鮮半島といった海外植民地を失うことになった情勢の下、次のように書いた。

 「領土の縮小は勿論不利益を免れない。しかし国際貿易が自由に許されるなら、その不利益は経済的には殆ど問題にするに足らず、又国際貿易が許されざる場合でも、国内の産業の能率の増進にて、これを補うことが可能である」

 石橋は、戦前期以来、日本の存立の基盤が自由貿易にあることを「信念」として打ち出していた。そして、戦後の日本の歩みは、そうした石橋の「信念」が正しいものであることを証明した。故に、日本の国家戦略の柱の一つが、石橋が伝えたような自由貿易への「信念」という「仏」に、どのように「魂」を入れていくかということであるのは、あらためて指摘するまでもないことである。

 その意味では、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドでの交渉決裂は、日本にとっては直接に与り知らぬ米国と中印両国との対立の結果とはいえ、日本の国益に沿うものではないであろう。

≪価格だけが強さにあらず≫

 ドーハ・ラウンドでの交渉決裂の一方で、日本は、自由貿易への「信念」を具体的な政策として現す独自の試みを続けなければならない。様々な国々を相手にした自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の樹立は、そうした試みの事例である。

 実際、日本は、今年4月時点で東南アジア諸国連合との「包括経済連携協定」の樹立を成し遂げている。韓国とのFTA樹立への議論を再開する動きは、李明博韓国大統領の登場を機に始まると見られたものの、竹島領有権に絡む摩擦の再燃によって止まっている。

 李大統領は、就任に際して、「経済成長率」「1人当たり所得」「GDP規模」をそれぞれ「年平均7%」「年間4万ドル」「世界第7位」に押し上げる政策目標を「7・4・7政策」として打ち出していたわけであるけれども、現下の日韓摩擦の再燃は、日本よりも経済再建を掲げた李政権下の韓国にこそ「負」の効果を及ぼすであろう。

 もっとも、日本にとっては、既に始まっている豪州、インド、チリ、メキシコとの議論に加え、たとえば米国やカナダとのFTA樹立に向けた議論を模索するほうが、自らの自由貿易に対する「信念」を鮮明に打ち出す上では、意義深いことに違いない。そして、それは、福田康夫総理が標榜する「太平洋を『内海』に」構想に内実を与える意味からも、大事な仕掛けであろう。

 無論、こうした動きに関しては、特に国内農業の振興には明白な悪しき影響を及ぼすであろうという指摘は、これまでもたびたび為されてきた。ドーハ・ラウンドでの交渉に際しての日本政府の目標として伝えられたのは、結局のところは、どれだけ国内農業を保護する余地を広く取るかということに他ならなかった。

 しかしながら、産地偽装が社会問題化するほどまでに国内産品志向の強い日本の消費者の性向を考え併せれば、価格だけが産業の強さを支える要件であるという説明には、筆者は率直に疑問を呈さざるを得ない。

≪「安全性と品質」で世界に≫

 振り返れば、昭和60年代前半、牛肉・オレンジの輸入自由化に絡む対米交渉が進められた折には、輸入自由化の暁には国内産牛肉は甚大な打撃を受けるという展望が示されたものである。しかし、実際には、それ以降、安全性と品質に裏付けられた国内産牛肉の「ブランド」化が進展したのである。

 折しも、商品国際価格の高騰が国内農産品の価格面での不利を幾分かでも減らしているのであれば、今は、国内農業にとっては、安全性と品質を武器にして世界に打って出る好機なのではないか。

 昨年以来のサブプライム・ショックに伴う金融混乱は、一向に収束の気配を示さず、一説には「世界大恐慌」以来とも評される悪しき状況を招いている。

 ドーハ・ラウンドでの交渉決裂は、世界における保護主義の動きの台頭への懸念を呼び起こさざるを得ないであろう。

 現在の風景は、経済停滞による閉塞感が世を覆い、戦争への道が踏み固められた昭和初期の風景とは、どことなく似通っているかもしれない。ただし、現在の日本が往時の日本と決定的に異なるのは、多くの人々が自由貿易への「信念」の正しさを理解し、その自由貿易による所産としての「繁栄」を依然として手放していないことにある。

 歴史は、単純には「繰り返さない」のである。(さくらだ じゅん=東洋学園大学准教授)

20/08/07 06:20

【正論】櫻田淳 自由貿易の「信念」振り返る夏

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【2008/08/07 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
支那独禁法 無関心では済まされない

 中国政府が1日から独占禁止法を施行した。カルテルや市場支配力を背景に高値販売を強要するなどの商行為が横行する中国で、先進諸国同様に独禁ルールを順守しようとする動きである。

 しかし、法律の細則やガイドラインが決まっておらず、中国で事業展開する日系企業の多くが不安の声を上げている。

 経済の改革・開放を推し進めながらも一党独裁を堅持する国である。自由な市場競争を保障するための独禁法が中国で機能するには課題が多い。企業活動がグローバル化している時代だけに、中国には内外無差別での透明で公平、公正な法律の運用を求めたい。

 独禁法は昨年8月に成立した。これまで、「不正競争防止法」や「価格法」でカルテルなどを禁止してきたが、現実には取り締まりは不十分で業界団体による談合が続いてきた。

 だが、このままでは、世界貿易機関(WTO)の中で「非市場経済国」待遇のあつかいを受けている現状を変えるのが難しい。その撤廃を国際社会に求めるためにも中国は新たな独禁法制定が不可欠と判断した。

 この独禁法の柱は3つだ。1つは「カルテルの禁止」で、日系企業の多くは、他社との情報交換の意味もあって業界団体の談合に参加しているところも多いという。今後は、こうした中国の悪慣行とは決別を求められよう。

 あとの2つは、「市場支配的な地位の乱用禁止」と「企業の合併・買収の事前審査」である。日系企業の不安の大半は、この規定の具体的な内容が施行後のいまになっても分からない点にある。

 例えば、日本のある衣料品会社が他社の買収に乗り出したとする。その両社が中国に生産拠点を持っている場合、市場の占有率によっては中国の独禁法に抵触する可能性がある。審査次第では買収断念の事態も想定される。

 日系企業の共通の悩みは、中国企業や行政当局による恣意的な法令の運用である。独禁法でも、どのような行為が違反になるかの具体例が示されないまま、ある日、突然、巨額の制裁金が科されるという事態を恐れている。

 不安を払拭し、中国での日系企業の活動を萎縮させないために必要な措置を講じる必要がある。日本の公正取引委員会は、中国側との定期協議などの場を設け透明な法適用を要請してもらいたい。

20/08/04 05:14

【主張】中国独禁法 無関心では済まされない

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【2008/08/04 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】佐伯啓思 「マルクスの亡霊」を眠らせるには

≪急速に左傾化する若者≫

 若い人を中心に急速に左傾化が進んでいる。しかもそれはこの1、2年のことである。小林多喜二の『蟹工船』がベストセラーになり、マルクスの『資本論』の翻訳・解説をした新書が発売すぐに数万部も売れているという。若い研究者が書いたレーニン論がそれなりに評判になっている。書店にいけば久しぶりにマルクス・エンゲルス全集が並んでいる。私のまわりを見ても、マルクスに関心を持つ学生がこの1、2年でかなり増加した。

 私のように、マルクス主義左翼全盛の学生時代に知的好奇心をやしなった者にとっては、マルクスを「卒業」したところから社会科学の研究は始まったはずであった。そのような時代的経験を経た者からみると、この動向は何か奇妙にみえる。

 しかし、考えてみれば決して不思議なことではない。近年の所得格差の急速な拡大、若者を襲う雇用不安、賃金水準の低下と過重な労働環境、さながら昭和10年代の大恐慌を想起させるような世界的金融不安といった世界経済の変調を目の前にしてみれば、資本主義のもつ根本的な矛盾を唱えていたマルクスへ関心が向くのも当然であろう。おまけに、アメリカ、ロシア、中国、EU(欧州連合)などによる、資本の争奪と資源をめぐる激しい国家(あるいは地域)間の競争と対立は、あたかもレーニンとヒルファーディングを混ぜ合わせたような国家資本主義と帝国主義をも想起させる。

≪「無政府的な」資本主義≫

 この事態を生み出したものは何だったのだろうか。いうまでもなく、社会主義の崩壊以降に一気に進展した金融中心のグローバリズムである。

 資本主義の崩壊、社会主義への移行というマルクスの予言は間違っていると考えていたので、私にとって、社会主義の崩壊は、その時期はともかく、ある意味では当然であった。しかし、その後のいわゆる新保守主義もしくは新自由主義のいささか傲慢なまでのグローバル市場礼賛は、私にはあまりに危ういものに思われた。絶えず貪欲なまでに利潤機会を求めて拡張を続けようとする資本主義は、過度な競争の果てに、社会そのものを深刻な不安定性の深淵に引きずり込むのではないか、と思われたのである。

 社会主義の崩壊以降の真の問題は、資本主義の勝利を謳歌することではなく、いかにして「無政府的な」(つまり「グローバルな」)資本主義を制御するか、という点にこそあったのである。

 グローバリズムは、経済の考え方を大きく変えた。戦後の先進国の経済は、製造業の技術革新による大量生産・大量消費に支えられて発展してきた。賃金上昇が需要を喚起してさらなる大量生産を可能とし、一国の経済政策が景気を安定化したのである。社会は中間層を生み出し、政治は安定した。明らかにマルクスの予言ははずれた。

 しかし、昭和50年代のアメリカの製造業の衰退は、資本主義経済の様相を大きく変えていった。国内での製造業の大量生産ではなく、低賃金労働を求める海外進出によって、さらには金融・IT(情報技術)部門への産業構造の転換によって、資本と労働を著しく流動化させ、そこに利潤機会を求めた。

≪「経済外的」な規制必要≫

 その結果、平成初年代に入って、利潤の源泉は、低賃金労働や金融資本の生み出す投機へと向かった。要するに、製造業の大量生産が生み出す「生産物」ではなく、生産物を生み出すはずの「生産要素」こそが利潤の源泉になっていったのである。かくて、今日の経済は、確かに、マルクスが述べたような一種の搾取経済の様相を呈しているといってよい。

 資本主義が不安定化するというマルクスの直感は間違っていたわけではない。しかしむろん、マルクスの理論や社会主義への期待が正しかったわけでもない。マルクスに回帰してどうなるものでもないのである。

 問題は、今日のグローバル経済のもつ矛盾と危機的な様相を直視することである。市場経済は、それなりに安定した社会があって初めて有効に機能する。そのために、労働や雇用の確保、貨幣供給の管理、さらには、医療や食糧、土地や住宅という生活基盤の整備、資源の安定的確保が不可欠であり、それらは市場競争に委ねればよいというものではないのである。

 むしろ、そこに「経済外的」な規制や政府によるコントロールが不可欠となる。「無政府的」な資本主義は、確かにマルクスが予見したように、きわめて不安定なのである。マルクスの亡霊に安らかな眠りを与えるためには、グローバル資本主義のもつ矛盾から目をそむけてはならない。(さえき けいし=京都大学教授)

20/07/31 05:22

【正論】佐伯啓思 「マルクスの亡霊」を眠らせるには

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【2008/07/31 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】労働者派遣法改正 非正規雇用のひずみ正せ

 政府・与党の労働者派遣法改正に向けた動きが急だ。ワーキングプアの存在に代表される行き過ぎた雇用の規制緩和を見直す動きである。派遣業界では昨年来、二重派遣やピンハネなど法令違反が相次いだ。派遣法改正は当然の流れであろう。

 ただ、グローバルな競争にさらされた企業が正社員の採用を抑制するなかで、非正規雇用が雇用の受け皿となり、失業者の増加を防いできた面も否定できない。

 正規雇用と非正規雇用とのバランスをどう取っていくのか。国の将来像を踏まえた長期的視点に立って立法化してもらいたい。

 労働者派遣法は昭和60年に制定され、当初は通訳やアナウンサーなど専門的な13業務だけに派遣が限定されていた。それが、バブル崩壊で雇用調整を進める企業側の要請もあって、いまでは建設、港湾運送などを除いたほとんどの業種で認められるようになった。

 しかし、派遣労働のすそ野が広がるにつれて、深刻な問題も浮き彫りになった。バブル崩壊後の就職氷河期といわれた時期に正社員になれなかった若者の多くが、職業訓練の機会がないまま年齢を重ね、非正規労働を続けている。

 厚労省によれば、卸売・小売業では非正規労働者の割合が平成初年代以降急激に上昇し、14年には業界全体の44・2%に達した、という。この上昇傾向はいまも続いている。

 派遣やパートで働く人は、正規雇用と違って雇用契約が不安定で、いつ仕事を辞めさせられるか分からない不安を抱いている。

 経営側にはなお、規制緩和を求める意見が強いが、このまま非正規雇用の増加が続けば、将来の生活保護が増加し、国の社会保障負担が増大する懸念も強まる。そうした非正規雇用が生む社会のひずみに対して、対策を急ぐのは政府の責務である。

 厚労省の研究会がまとめた「契約期間が1カ月以内の派遣を原則禁止する」などの対症療法だけでは不十分だろう。企業の核となる正規社員への転換を進めるとともに、非正規社員の待遇を改善し、同一労働同一賃金に近づける方策を探る必要がある。健康保険や雇用保険への加入も課題だ。

 国民が生きがいを感じ、安心、安定して働ける社会へ向け企業側の意識改革も欠かせない。それが長期的に国が発展する礎であることを忘れてはなるまい。

20/07/29 05:56

【主張】労働者派遣法改正 非正規雇用のひずみ正せ 

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【2008/07/29 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】一斉休漁 構造問題解決へのバネに
 漁船の燃料費高騰に漁業者から悲鳴が上がっている。15日には全国のほぼ全漁船に当たる20万隻が一斉休漁し、窮状を訴えた。昨年比で倍、5年前に比べると3倍もの上昇は確かに深刻だ。

 全国漁業協同組合連合会(全漁連)の試算だと、このままの高騰が続いた場合、漁業就業者の4割近い約8万5000人が廃業に追い込まれるという。

 だが、一斉休漁は抜本的な解決策にならないばかりか、長期的には消費者の魚ばなれがさらに加速するだけだろう。事実、今回の休漁でも魚価は一時的に上昇はしたものの、漁業者の収入増には結びついていないのが実情だ。

 全漁連などは、コスト上昇に見合う魚価対策などとあわせ、政府による直接補填(ほてん)も求めている。

 しかし、これにはさすがの農林水産省も及び腰だ。原油高騰で苦しんでいるのは漁業者だけではないからである。漁船用燃油のA重油は、すでに減免税措置があるだけになおさらだろう。

 漁業は総コストに占める燃料費比率が3割超と他産業に比べ大きいのは確かだが、いまだ一匹狼的な古くて非効率的経営が続いていることも、原油高に振り回されやすい体質となっている。こうした構造的問題の解決こそ先決だ。

 漁業者間の話し合いによる計画操業などは、もっと進められてよい。個々の漁業者がわれ先にと争って同一漁場に群がる現状では、互いの足を引っ張るだけだ。魚価の安定にならぬばかりか、乱獲による資源枯渇にもつながる。

 省エネ対策も急務だ。底引き網漁船では1ノットの減速で最大3割の燃費節減が可能という。イカ釣り船では集魚灯の光源を省電力型の発光ダイオードに変える工夫も始まっている。

 政府もこうした先進的取り組みを行う経営体には積極的な支援を惜しむべきではなかろう。

 水揚げから店頭まで4段階の仲買卸業者が介在するという独特な流通システムも見直せないか。地元の魚は地元で消費する「地産地消」の推進も流通コスト削減の上で重要だ。

 途上国の人口増、先進国で高まる健康志向などを背景に、魚の消費量は世界的に増えている。いくらでも安い魚を輸入できた時代は終わった。それも国内漁業には追い風だろう。危機を嘆くのではなく、再生に向けたバネとする知恵と努力が求められている。

20/07/17 05:05

【主張】一斉休漁 構造問題解決へのバネに

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【2008/07/17 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
全国二十万隻の漁船が、今日一斉に休漁

 不世出の大横綱、双葉山の実家は、大分県で回船業を営んでいた。10歳のときから、父親と帆船を操り、暴風雨のまっただなか、海にほうり出されて九死に一生を得たこともある。昨年11月に70歳で世を去った稲尾和久さんは、別府の漁師の息子として生まれた。

▼ 素人相撲の横綱だった父親が、少年時代の双葉山に投げ飛ばされたという伝説も残っている。稲尾さんもまた、8歳で父親と伝馬船(てんません)に乗り、櫓をこぎ始めた。のちに黄金時代の西鉄ライオンズで、「鉄腕」の異名をとった稲尾さんの最大の武器は、針の穴をも通すといわれた制球力だった。

▼ その源になったのが、少年時代の櫓こぎで鍛えた足腰の強さだったといわれる。もっとも当時は、野球選手になるとは夢にも思っていない。「右だ、左だ、前へ、遅く、速く、止めろ。指示通り操船できないと、おやじの青竹が頭に飛んでくる」。

▼ 日本経済新聞の「私の履歴書」で、つらい体験を振り返っていた。エンジン付きの漁船を操作する今の漁師さんには、そんな苦労はないけれど、別の悩みが次々と持ち上がっている。海の汚れに、後継者難、何よりこの5年で3倍近くになった燃料費の高騰だ。

▼ 全国20万隻の漁船が、きょう一斉に休漁するのは、窮状を国民に訴え、政府に必要な対策を求めるのが目的だ。もっとも、原油高に苦しんでいるのは、漁業者だけではないから、政府は燃料代の補充には慎重だ。そうかといって、魚の値段に上乗せすれば、消費者の魚離れに拍車がかかる恐れがある。

▼ 少年時代の稲尾家の食卓には、魚のあらの煮付けが毎日並び、夕食は肉だったという友達が、うらやましかったそうだ。今に、魚の煮付けの夕食を、うらやむ日が来るのだろうか。

20/07/15 05:02

【産経抄】7月15日

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【主張】タクシー再規制 業界体質の改善が先決だ

 全国で料金値上げが相次いだばかりのタクシー業界で、今度は新規参入や増車を制限する規制が復活しそうな気配だ。

 利用者利便の向上を目指すせっかくの自由化に逆行する動きであり、慎重な検討が必要だ。安易な再規制は、業界の正常化をさらに遅らせかねない。

 国土交通省は再規制をこう主張する。規制緩和でタクシー台数は増加傾向にあり、地域によっては行き過ぎた運賃競争を招いている。それがまた、乗務員の労働条件を極度に悪化させる原因にもなっており、緊急対応はぜひとも必要だというのである。

 規制復活の方向は、すでに交通政策審議会の作業部会に示され、実施は既定方針として進み始めている。国交省は、来年の通常国会には道路運送法改正案を提出する段取りという。

 タクシー事業は、平成14年の規制緩和で新規参入や既存業者の増車が大幅に自由化された。東京地区を例にとっても、緩和前に比べると車両数は約1割増の6万台近くに達している。

 その分、利用者はタクシーが拾いやすくなり、明らかにサービスは向上したと受け止めている。だがその一方、乗務員の待遇は悪化しているのも事実だ。

 タクシー乗務員の平均年齢は50代前半で、全産業平均より10歳以上高い。労働時間も長い。半面、平均年収は350万円程度にとどまり、全産業平均とは200万円以上の格差がある。この10年では100万円前後下落した。

 国交省は昨年、東京を含む全国の半分以上の地域で相次ぎ値上げを認めたが、その最大の理由も乗務員の待遇改善だとされた。

 ところが結果はどうだったか。値上げを上回る客足の落ち込みにより、乗務員の収入はむしろダウンしている。それでも台数が減らないのは、歩合制が主流のいびつな給与体系と、人件費が総費用の7割を占めるというタクシー事業の特殊事情があるためだ。

 車両の調達・管理コストの比率が低い分、事業者は売り上げ減には増車で対抗しようとする。結果的に乗務員の待遇はますますしわ寄せを受ける構図である。

 本来、規制緩和とあわせて行政が真っ先に取り組むべきは、こうした業界体質の抜本改善だった。そこが手つかずのままでは、値上げも再規制も、結局は弥縫(びほう)策の繰り返しにすぎない。

20/07/07 05:16

【主張】タクシー再規制 業界体質の改善が先決だ

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【2008/07/07 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
支那産ウナギを国産と偽る

 米国の一ドル札の裏には、「目」から、光が出ている図柄がある。神がいつも見ている、という意味だそうだ。キリスト教が経済と今も強く結びついていることを示している。

▼ そもそも西欧に近代資本主義をもたらしたのは、腐敗したカトリック教会への抗議から生まれた、プロテスタンティズムの倫理だった。マックス・ウェーバーは、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のなかでこう説いた。長年、ウェーバーに取り組んできた作家の長部日出雄氏は、資本主義のルーツは日本にもあったと主張する。

▼ たとえば奈良時代の僧、行基が地獄極楽の存在を日本の庶民に伝えたことに注目する。善行には善果があり、悪行には悪果がある。その思想はやがて、来世での仏の救済を信じて、現世において不当な利益を得るのを潔しとしない宗教倫理、経済倫理に発展していく(『仏教と資本主義』新潮新書)。

▼ またもや食品偽装が発覚した。産地の違う肉を岐阜のブランド牛「飛騨牛」、中国産ウナギを「国産」と偽っていた。口止め料として1000万円、責任をかぶることの見返りに1億円なんて話も飛び出している。

▼ 一連の事件と共通しているのは、ばれたからしぶしぶ事実を認めた経営者の態度だ。それほど悪いことをしたという自覚はないようだ。まして、地獄へ堕ちる恐怖などみじんも感じられない。一人一人のモラル欠如の背景には、日本の資本主義を支えてきた精神の変質があるのではないか。

▼ 一方で宗教学者の山折哲雄氏は、事件の多くが内部告発で明るみに出たことに、日本固有の倫理の危機を感じ取っている。もともと、食は宗教と深いかかわりがある。宗教界がどう受け止めているのか、真摯な声が聞きたい。

20/06/27 05:02

【産経抄】6月27日

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米と魚を食べよう

 「海の男」には、昔から信心深い人が多い。漁船内に安置してある船霊(ふなだま)のご神体に、炊きたてのごはんやお神酒、生魚などを供える。大漁を感謝して、魚の血を船霊に塗りつける。他の船が漁を呼び込むために、それを盗み出すこともある。

▼ 地域によって信仰の形は違うが、大漁と航海安全という切実な願いは共通している(『カツオの産業と文化』若林良和著)。カツオは江戸時代に入って、旬の味として武家や町民に珍重されるようになった。人力と風に動力を頼っていた当時の和船は、大時化(しけ)の前に無力だった。

▼ 弘化4年6月には、三陸沖で70艘以上のカツオ船が漂流し、500人近い犠牲者が出た記録が残っている。明治の終わりごろから、石油発動機を備え付けた漁船の開発が相次ぎ、現在の大型のカツオ漁船は、さまざまな航海機器を備えたハイテク漁船だ。

▼ それでも、千葉県犬吠埼東方約350キロ沖で起きた、巻き網漁船「第58寿和丸」の転覆事故は防げなかった。行方不明者の捜索は難航している。死亡した甲板長(44)は、小学2年の長男と2歳の長女の父親で、子供部屋を増築したばかり。長男は「お刺し身になるお魚をたくさん取ってきて」と送り出したという。

▼ 強風にもかかわらず第58寿和丸が、福島県いわき市の小名浜漁港に帰らなかったのはなぜか。船を所有する会社の社長は、燃料代を節約するためだったのではないか、とみる。「全国漁業協同組合連合会」によると、燃料代は5年前の2・7倍に上る。

▼ 来月には全国の主要漁業団体が一斉に休漁する。世界を大混乱に陥れている原油価格の高騰は、「海の男」の命まで脅かし始めた。船霊よ、この怪物をなんとか鎮める方法はないものか。

20/06/26 05:03

【産経抄】6月26日

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【2008/06/26 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】原油高騰 産油国との協調を強めよ

 主要産油国と消費国の緊急閣僚会合が開かれ、サウジアラビアが今後、生産能力を最大で現状から1・5倍に引き上げる方針を表明した。将来の供給拡大を大胆に表明することで高騰が続く原油価格を抑制する効果を狙った。これに対して、市場では即効性が期待できないとしてその効果を疑問視する見方が多い。

 しかし、需給逼迫懸念を緩和する対策を打ち出すことは何であれ重要だ。原油高は世界中で物価の押し上げ圧力となっている。消費国と産油国は今後も緊密に対話を継続し、超原油高に対して知恵を絞ることが必要だ。

 今回の会合は、最大の産油国のサウジアラビアが主催国となった点で注目された。これまで、増産を迫る米国などからの圧力で、昨年秋以降、複数回にわたって石油輸出国機構(OPEC)が小幅な増産を実施してきた。

 だが、市場は反応せず、原油価格の高騰が続いてきた。OPECの中には増産余力が少ない上、原油高騰による収入増を期待する産油国が多いからだ。

 とはいえ、価格高騰が長引けば、消費国は省エネに動き、石油需要の減少が予想される。長期的には、価格が安定する方が産油国にとってもメリットがあるはずだ。その意味でサウジが増産を表明した意義は評価できる。

 今後は、他の産油国も新規油田の開発に力を入れるべきだろう。石油が枯渇し始めているという説もあるが、価格高騰で開発コストに見合うようになった油田もある。増産で安定供給の見通しが立つことは消費国だけでなく、産油国にとっても有益なはずだ。

 現在の価格高騰の要因は複合している。まず、経済発展が著しい中国やインドなどの新興国の石油需要拡大が背景としてある。サブプライム問題で、世界中の投機資金が金融市場から石油などの商品市場に移動したことも、価格上昇に拍車をかけている。

 これを踏まえて、投機資金への対応も今回の会合の重要議題になった。抜本的な対策は難しいが、共同声明で初めて「規制」という表現を使い、投機資金の監視強化を共有した点は一歩前進だ。

 この原油高騰は一筋縄ではいかない。さまざまなメッセージを市場に示し、できる対策を順次取っていくしかない。産・消双方が対立しては投機資金に足元をみられるだけである。

20/06/24 05:30

【主張】原油高騰 産油国との協調を強めよ

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【2008/06/24 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】著作権とネット 「公正利用」の導入が必要

 政府の知的財産戦略本部は平成20年度の「知的財産推進計画平成20」を決定した。この中で、変化が著しいデジタル・ネット社会に適応するため、著作権法の見直しを打ち出している。

 特に注目したいのは、教育や批評、研究など公正な理由があれば無許可で著作物が利用できるようにする「フェアユース(公正利用)」規定の導入について、今年度中に結論を出す方針を明示した点である。

 人々の創造的な活動を支援し、その独占的な権利を保護する著作権法が重要なのはいうまでもない。しかし、地球規模で国内外の情報が融合する時代に日本の著作権法は合わなくなっている。

 日本は欧米に比べてインターネット上の知的資産の蓄積が少ないといわれる。このネット環境を変え、著作権を時代に合致したものにするためにも、フェアユースの導入は必要であろう。

 現行の著作権法は、個人での利用など一部の例外を除けば、他人の著作物の無断コピーやネット上への配信などを原則として禁止している。著作物の利用には、その度に権利者の許諾を得るよう求められる。

 このため、現実と合わない不都合な状況も起きる。ヤフーやグーグルなど検索サービス業者がさまざまなホームページの情報を収集し蓄積する行為が、日本では著作権法違反になってしまう。こうしたことから検索サービス業者は海外に設置したサーバーに情報を蓄積して、形式上、日本の著作権に抵触しないようにしている。

 フェアユースの規定ができれば、これらの問題が解決する。図書館や大学の研究成果の二次利用なども促され、ネット上の知財が拡大する。例えば、国立国会図書館の880万冊の蔵書についても、図書館が権利者の許諾なしにデジタル化し、国民はネット上で利用できるようになる。

 問題はフェアユースかどうかの線引きが難しい点である。この規定がある米国でも時々訴訟が起きる。「権利者の利益を不当に害さない」との条件に加え、トラブルに備えて公正な利用の具体的な指針を工夫する必要があろう。

 日進月歩のネット社会において大事なのは、公共の利益と権利者保護のバランスである。著作権保護の範囲は、国全体の知財の蓄積を後押しする戦略の中で考えることが重要である。

20/06/23 05:30

【主張】著作権とネット 「公正利用」の導入が必要

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【2008/06/23 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】三木光範 「人間中心」に潜む落とし穴

≪科学的な使いやすさも…≫

 最近、人間中心設計という言葉が注目を集めている。これは、人間が使う複雑なシステムや機械などに関して、使う人の立場や視点に立って設計をすることを指す。もちろん、昔から職人やエンジニアたちは工芸品、住宅、あるいは自動車など、多くのものを人間にとって使いやすく設計してきた。しかし、それらは比較的単純な機能を持つものであり、また、長い年月の中で使いやすく進化してきた。

 これに対して、最近の機械やシステムにはコンピューターが組み込まれ、極めて複雑な機能を持ち、さらに製品の寿命が短く、使いやすくなるまで進化する時間がない。このため、機器を設計するときには、操作ボタンの形や大きさ、あるいは配置、また液晶画面に何をどのように表示させるかなどを、ユーザーが持つ知識や使用状況などを考慮しながら、認知心理学の原理を基に最適なものにする。

 これが人間中心設計である。すなわち、ユーザーにとって使いやすい表示や操作とはどのようなものかを、経験的にではなく、科学的に考えようということである。

 しかし、科学的という言葉は多くの場合、欧米的という言葉と同義である。このため、人間中心設計に登場する人間は、多くの場合、欧米人であり、したがって、人間中心設計の考え方で設計されたものが、日本人にとって使いやすいものかどうかには疑問が残る。

≪欧米社会を想定したもの≫

 このことは、量を測る「単位」に最も良く現れている。世界標準の長さの単位はメートルであり、これは科学的に定義されており、日本の1メートルとフランスの1メートルに寸分の相違もない。このため、世界中で製造された部品を組み合わせて機械やシステムを組み立てることができる。これはグローバルスタンダードとして非常に重要なことである。

 しかしながら、これらの単位は人間中心という考え方にはほど遠い。日本における土地の面積の単位は“坪”であり、酒や米の量を量る単位は“升”や“合”であり、米国における長さの単位はフィートであり、重さはポンドである。すなわち、昔から用いられてきた単位はすべて人間の生活を基準に決められたもの、すなわち人間中心であり、その国、その民族にとって最も使いやすいものに進化してきた。“坪”は、大きな歩幅で歩いた時の2歩分(1間=約180センチメートル)を一辺とする正方形の面積であり、土地のおよその面積は歩幅で計測することができる。一方、1メートルは「1/299792458秒の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ」と科学的に定義されていて、人間とは無関係な量である。

 科学は普遍性を持つことで高度に発達し、大きな利益を人間にもたらした。しかし、その陰で人間性が阻害されてきたことも事実である。その科学が、再び人間らしさを取り戻そうとしているのが人間中心の考え方だ。ところが、もし、この“人間中心設計”なるものが“欧米人間中心設計”となっているなら、日本人にとって使いやすい機械やシステムを設計することはできない。認知心理学で取り扱う対象が、文化や風俗、あるいは気候などの影響を受けないはずはないからである。

≪個性重視も画一化に傾く≫

 人にとって使いやすい設計は、グローバルスタンダードではあり得ない。それよりも、ローカルスタンダードであり、さらにはパーソナルスタンダードが重要なのだ。これまでの工業製品は誰にでも使いやすくするため、先進国の人間の知識や文化、あるいは平均的な思考方法や認知能力を基に、“科学的に”設計されてきた。人間中心設計とはいえ、人間の平均値を基準とする設計であり、本当の人間中心設計は、その人の文化や個別の知識、思考方法や認知能力に適合したものでなければならない。

 個性重視と言われながら、多くの人は画一的な“人間中心設計”の工業製品と共に暮らすことにより、画一的な思考と認知の方法に洗脳されてゆく。これを止めるには、工業製品に新しい設計の考え方を持ち込む必要があろう。それは、その人の地理的・歴史的・文化的・家族的背景などを考慮したライフスタイル中心設計、あるいはその人の嗜好を考慮したテイスト中心設計ではないだろうか。

 先日、わが家で購入した大型液晶テレビのリモコンは、前から使っているDVDビデオレコーダーのリモコンとデザインや操作方法がまったく異なっていた。いくら両者が“人間中心設計”思想で設計されているとしても、私個人にとってはすこぶる使い勝手が悪い。新しいリモコンは、私が慣れ親しんだリモコンの伝統を受け継いで変化するリモコンであってほしい。(みき みつのり=同志社大学教授)

20/06/19 05:12

【正論】三木光範 「人間中心」に潜む落とし穴

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【2008/06/19 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
十回もダビングしてまで見たいと思ふやうな番組は無い

 1回しかできなかったデジタル放送番組のDVDなどへのコピー回数を10回まで増やす「ダビング10」の実施が危ぶまれている。

 6月2日から始まる予定だったが、著作権保護を目的にデジタル機器に課金する補償金制度の拡大をめぐって、著作権団体と電子機器メーカーが対立しているためだ。このままでは、コピー制限緩和を歓迎していた消費者の期待を裏切ることになりかねない。

 現在、デジタル放送番組をデジタル録画機に記録させてDVDにコピーする場合、その回数は1回に制限されている。

 デジタル技術だと画質や音質が何度コピーしても劣化せず、映画やドラマを無断複製して販売する海賊版が横行したためで、平成16年に著作権団体などの意向を受けて現行規制が導入された。

 しかし、これには何度でもコピー可能なビデオテープでの録画に慣れている消費者から不満の声が相次いだ。「ダビング10」の導入は、こうした声を反映する形で総務省の審議会で昨年夏に決まった経緯がある。

 ただ、今回の対立の火種は、その審議会の答申にあった。答申で著作権者への配慮が明記されたため、著作権団体が補償金の対象をこれまで網がかかっていなかったハードディスク内蔵のデジタル録画機や携帯音楽プレーヤーなどにも広げるよう要求したからだ。

 11年度から始まった録画の補償金制度はメーカー側がDVDやCDなどの記録装置や記録媒体の販売時に価格の数%分を徴収し、著作権者に配分している。メーカー側は著作権団体がこの制度拡大を「ダビング10」実施の条件にしていることに反発し、一気に対立が深まったのである。

 しかし、この対立で実施時期が延期されたのでは消費者はたまらない。すでにメーカーは北京五輪に向けた目玉商品として「ダビング10対応」の録画機器を販売している。当初の予定通り「ダビング10」をスタートさせた上で、補償金拡大の是非を議論するのが筋ではないか。

 もちろん、違法コピーを放置したままでは、創作文化の破壊につながるとの著作権団体の言い分もわかる。録画で受ける不利益を補う補償金制度も意味があろう。だが、著作権保護も消費者の理解があってこそ成り立つことを忘れてはならない。

20/05/25 05:02

【主張】ダビング10 まずスタートして議論を

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【2008/05/25 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】成田開港三十年 国際国内分離も見直す時

 成田空港が開港して30周年を迎えた。

 地元自治体との調整難航や反対派農民の強い抵抗などで、建設決定から12年を要する難産の開港だった。それが今や、年間利用客数で3500万人を超す文字通り日本の表玄関へと成長した。その成果は評価されてよかろう。

 だが、さらなる飛躍には厳しさがつきまとう。改善が進んだとはいえ、世界の主要空港に比べ、都心から遠過ぎる欠点を補うためアクセス向上は不可欠だ。

 なにより、国を代表する空港として見劣りがする発着能力の大幅拡充を急がなければ、来年度に予定される空港会社の完全民営化計画にも支障が出かねない。

 成田空港の発着枠は現在、年間20万回だが、第2滑走路の延伸にめどが立ったことで、2年後には22万回まで拡大する見通しだ。それでも、グローバル化の進展で増大一方の航空需要には焼け石に水だと言わざるを得ない。

 とりわけ経済成長が著しいアジア地区では、航空需要が今後も右肩上がりで高まると予想される。それを見越し、中国、韓国、シンガポールなどでは、早くも空港施設の増強が急ピッチで進む。それに比べて日本の立ち遅れぶりはあまりに際立っている。

 空港会社の試算では、延伸後の運用次第では現在の1・5倍にあたる30万回まで発着枠拡大は可能という。だが、騒音被害の増大を懸念する地元の一部自治体などは早くも反発の声を上げており、先行きは不透明のままである。

 成田空港のライバル、羽田空港でも再拡張工事が進み、2年後には発着回数が約41万回と現在から3割以上増える。その際には増加分の半分程度が国際便に割り当てられる可能性がある。

 日本は長年、「国際線は成田、国内線は羽田」とする内際分離を基本政策にしてきた。しかし、利用者にはアクセスの利便性ではるかに勝る羽田の国際化推進を求める声がもともと根強い。

 国際、国内のすみ分けは利用客にはやはり不便だ。ひとつの空港で自由な乗り換えが可能になれば、内外からの航空需要はさらなる拡大も見込める。

 羽田の国際化とともに、30歳を迎えた成田もまた、国内線とのアクセス網改善に取り組むべき時がきている。開港30年を機に、日本の航空政策そのものが見直しを迫られよう。

20/05/20 06:41

【主張】成田開港30年 国際国内分離も見直す時

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【2008/05/20 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】島田晴雄 インドに大きな可能性を見た

≪巨大国家の多様な側面≫

 このほどヴィバウ・カント・ウパデアーエ氏が主宰するインドセンターの招きで、投資家のグループと一緒に8日間ほどインドを訪ねた。

 インド経済は21世紀に入って成長を加速しており、とくにこの3年ほどは8〜9%の高度成長を達成している。とりわけIT(情報技術)産業の発展がめざましくいまや世界のソフトウエア開発のセンターになっており、所得の高まった中産階級が増加して消費が拡大し、自動車生産も急増している。

 それが世界の関心を集めているのだが、私たちは、膨大な人口をかかえる貧困なビハール州の農村も訪ねるなど、巨大なインドの多様な側面を同時に勉強させてもらった。

 インドは11億人の人口を擁する世界最大の民主主義国家である。人種も宗教も極めて多様で、イギリスの植民地支配を離脱してからも、内外に困難な政治課題をかかえながら、民主政治を維持しつつ、経済発展を達成させてきた民族の知恵には大いに学ぶべきものがある。

 インド東北部のビハール州は人口9300万人の大農業地帯だが、平均年収が200米ドルに満たない貧困地帯でもある。お釈迦様が紀元前5世紀に大学を開設した聖地ビィクラムシラーはその一角にあるが、私たちは自家用機とジープを乗り継いでその農村を訪ねた。

 おそらく紀元前と変わらない農耕風景はショックだったが、集まってくれた数千人の農民の瞳が曇っていなかったことに救いを感じた。

≪地域の発展段階に格差≫

 対照的に西海岸のグジャラート州はすでに先進国である。また隣のマハーラーシュトラ州の州都は近代世界史にその名を刻んできたインド最大の商業都市ムンバイ(旧名ボンベイ)だ。これらの地域は多くの財閥や事業家を輩出し、先端産業でもインドそして世界をリードしている。

 新興財閥アダニグループが構築中の巨大な港湾区ムンドラポートはそうした活力を象徴している。施設構築はまだはじまったばかりだが、中東のドバイまで1時間半で飛べる海岸にはすでに約300平方キロの土地が見事に整地され、明日の世界先端産業都市の出現を待つばかりとなっている。

 近年のインド経済の飛躍的発展は平成3年以来の抜本的な対外開放と規制改革が契機となったとされるが、これからのさらなる発展のためには広大な大陸にひろがるこの多様性をいかに克服しかつ生かすかが問われよう。私たちの会った国や州の指導者たちはそれを最大の課題と認識しているように見えた。

 ヴィバウ氏はデリーとムンバイを結ぶ高速貨物鉄道による輸送コリドー(街道)を提案し、森、小泉、安倍元総理をはじめ日本のトップリーダーの理解を得て、平成17年に両国の協力は具体化することになった。これが軸となってかつて日本の高度成長を支えた太平洋産業ベルトに擬せられる経済コリドーが構想されている。また、デリーからコルカタ(旧名カルカッタ)に至るガンジス河流域には農業コリドーが描かれ、それらを人材教育の面で支える知力コリドーも構想されている。

≪期待される日本の協力≫

 インドでは運輸、保蔵、市場の未整備から生産された穀物の3割近くが劣化して廃棄されるという。冷蔵技術や物流などのインフラ整備でそれが防げれば、日本2つ分の食料が確保でき、世界的な穀物不足も解消できるだろう。また、熱射で砂漠化しかねない広大な大地も、ソーラー発電を大規模に展開すれば世界の巨大なエネルギー供給源に転換し得る。貧しいビハール州からは大量の労働者がグジャラート州に出稼ぎに来ているが、彼らが技術を身につけて還流すれば経済全体の生産性は大きく向上するはずだ。

 鉄道、運輸、物流、冷蔵、冷凍やソーラー発電技術などは日本の産業が最も得意とするところであり、また、現場勤労者の能力向上こそは日本の人材戦略の基本であった。また、戦後日本農業の飛躍的発展をささえた農協の知恵は日本よりも今のインドの農村でこそ見事に生かされる可能性がある。

 日本のこうした協力はインド経済をより格差の少ない強力な経済に進化させるであろうし、それはまた日本企業の世界市場の拡大、食料やエネルギーや人材の確保などの面でこれからの日本を大きく助けるだろう。

 それは両国の繁栄を促進するだけでなく、食料やエネルギーの不足、環境の劣化など危機にひんしている世界に大規模な解決の手がかりを提供する可能性がある。

 戦略的協力から両国そして世界が得られるメリットは極めて大きい。日印相互の理解と協力の抜本的進展を期待したい。(しまだ はるお=千葉商科大学学長)

20/05/20 06:47

【正論】島田晴雄 インドに大きな可能性を見た

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【2008/05/20 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】農業白書 農政にこそ改革が必要だ

 日本農業の現状分析と将来展望を示す今年の農業白書がまとまった。世界的な食料需給の逼迫で、すでに4割を切った日本の食料自給率に、今年の白書は例年以上に危機感を募らせている。

 だが、それに対する肝心の政策になると途端に歯切れが悪く、新味ある提言はほとんど見られないのが率直な印象だ。

 中国など新興国の経済発展、途上国の人口増加などで、世界の食料需要は増大の一途だ。世界人口は現在の66億から今世紀半ばには92億人となり、穀物需要は1・6倍に跳ね上がる見通しという。アフリカなどの最貧国では暴動で死者まで出ているありさまだ。

 温暖化による砂漠化の進行に加え、バイオ燃料ブームも国際食料価格を押し上げている。白書は、「食料の安定供給システムの確立」を急がねば、輸入食料に依存する日本は深刻な危機に直面すると訴えるのである。

 その基本的認識は間違いではなかろう。だが、重要なことは、それでは日本としていかに対応すべきかという確固たる政策だ。

 白書が指摘する基本政策の大きな柱は、ひとつは農地の集約化・大規模化であり、ひとつは担い手農家の育成・支援による日本農業の生産性向上である。食品流通の在り方も含めた日本人の食生活全体の見直しについても多くを割いて言及している。

 だが、そのいずれについても思うような成果を挙げていないのが実情だ。基本方針は妥当でも、具体的な政策では矛盾点が多く、全体としては整合性を欠く結果になっているからだ。

 農地の集約化が進まない理由のひとつには、一方でコメ余り対策としての休耕補償や事実上の耕作放棄地に農地の優遇税制を適用し続ける矛盾がある。これでは耕作意欲を失った所有者であれ、手放すことは躊躇する。

 真にやる気のある農家を育てるのが「担い手づくり」政策であるはずだが、自由な農地の貸し借りすらできない現状では意欲的な経営は育つまい。農業従事者の高齢化は深刻で、いまや65歳以上が6割を占める。夢の持てない仕事に若者が関心を持てないのは至極当然であろう。

 現状の危機感を訴えるのもいいが、白書に期待されるのは実現可能で整合性のある政策展望だ。抜本改革が必要なのは日本農政の在り方そのものではないか。

20/05/19 05:32

【主張】農業白書 農政にこそ改革が必要だ

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【2008/05/19 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】独禁法改正 アメもムチも強化は必要

 今国会に独占禁止法の罰則を強化する改正案が提出されている。違反企業への制裁金を引き上げ、談合やカルテルへの抑止効果が狙いだ。

 経済界には罰則強化への不満が根強く残るが、健全な競争は経済の活力を生む。国会は早急に審議し、成立をめざしてほしい。

 今回の改正案では、カルテルや談合で主導的な役割を果たした企業には課徴金をこれまでの1・5倍とし、大規模な製造業者に対する課徴金の算定率も売上高の10%から15%に引き上げる。

 算定率を6%から10%に上げた2年前の前回改正に続く罰則強化である。さらに、時効までの期間も3年から5年に延長して摘発強化の姿勢を鮮明にした。

 公取委は前回改正によっても、期待した効果を着実に挙げてきた。公取委によれば、独禁法違反で調査に着手した件数は平成18年度で141件と、17年度に比べて約6割も増加した。

 企業が談合の事実を認めて“自首”してきた場合に課徴金の減免を認める制度の導入で、企業自らが談合情報を提供するようになってきた。これを受けて今回の改正では、減免企業数を3社から5社に拡充し、自己申告の時期についても、公取委の調査開始前という条件から、調査開始後でもかまわないとした。

 談合をなくして競争する環境を整え、企業にコスト削減や研究開発を促すことは、経済全体にとって有益である。今後も「アメとムチ」の使い分けによるメリハリのきいた法制度の工夫が大事だ。

 懸案となっていた審判制度の見直しについては、付則で「平成20年度中に検討し、所要の措置を講ずる」とした。自民党は基本的に廃止の方向と受け止めている。

 違反に問われた企業が、その処分に不服の場合、公取委が審判を開く。裁判の1審に相当するが、経済界はかねて「公取委が検察官と裁判官を兼ねるような制度はおかしい」と反発してきた。

 改正案の表現は公取委が一歩譲歩した形だ。ただ、企業の合併の可否については、公取委が「審判制度を残すべきだ」と主張し、国会での検討課題となっている。

 自由な競争環境の維持・整備には、「何が常識か」を判断する能力が問われる。公取委には不正と戦う果敢な姿勢とともに、公平な制度を実現する上での柔軟な対応を期待していきたい。

20/05/18 05:36

【主張】独禁法改正 アメもムチも強化は必要

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【2008/05/18 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
食糧問題は資源問題である

 コメ、小麦など穀物価格の急騰をきっかけに、途上国を中心に食糧確保不安が生まれ、各地で暴動が頻発している。

 事態を深刻に受け止めた国連は国際援助機関などとスイスのベルンで対策を協議し、6月3〜5日、ローマで「食糧サミット」を開催することを決めた。

 福田康夫首相も、要請を受け、食糧問題を7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の主要議題に加えることにした。

 今回の食糧価格高騰は、原油高、地球温暖化が要因とされる異常気象、国際需給構造の変化など地球規模であるだけに、対策も国際協調が欠かせない。

 ベルンでの会議では、石油高による農業コストの上昇、異常気象による不作、投機資金の流入、中国・インドなどの需要増、バイオ燃料増などが要因として報告された。適切対策のためには、なお徹底した分析が緊要だ。

 対策には短期、中長期がある。国連の世界食糧計画(WFP)は穀物価格高騰やドル安で援助資金が不足するとして、各国に計7億5500万ドル(約785億円)の追加資金拠出を求めている。これは短期の緊急対策だ。

 中長期の対策は難題だ。原油高騰、地球温暖化、需給構造、市場対策など大きな課題に取り組まなければならないからだ。しかもみな密接に関連し合っている。

 日本はサミット前に今月末、横浜で第4回アフリカ開発会議(TICAD)を国連などと共催する。日本の援助でアフリカ開発を促進する大事な会議だ。アフリカの約50もの国から首脳らが来日する。戦略的にも重要である。

 政府開発援助(ODA)額では日本は1990年代、ずっと世界1位だったが、昨年は5位にまで転落した。財政難からだが、日本にとってODAは外交の命綱でもある。見直しが急務だ。

 一部の国が決めた食糧の輸出規制は、日本など食糧輸入国にとっては食糧安全保障上の深刻な問題となりうる。国内の輸入食料品価格の上昇はすでに著しい。4割を切った日本の食料自給率の向上も引き続き重要な課題だ。

 今年、重要な国際会議の議長を務める日本の役割と責任は大きい。日本が援助などで積極姿勢を見せる必要も出てこよう。食糧危機は複合危機であり、総合的・戦略的取り組みが必要だ。政府にその態勢はできているだろうか。

20/05/05 05:09

【主張】食糧危機 日本の役割と責任大きい

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【2008/05/05 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】著作権ビジネス 競争だけでは健全さ奪う

 テレビやラジオ番組で使う音楽の利用料で放送局と包括契約を結ぶことは、新規事業者の参入阻害行為にならないか。そんな理由から公正取引委員会が日本音楽著作権協会(JASRAC)を独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査へ入った。

 著作権に対する権利意識が高まっており、その受託管理事業者間で競争が進み、権利者と利用者双方へのサービス向上が図られるのなら結構なことだ。

 だが、著作権をめぐっては保護強化を求める声がある一方、行き過ぎれば健全な文化活動の自由度を奪うとの懸念も聞かれる。公取委には、そうした論議も念頭に、適切な判断を期待したい。

 音楽著作権の委託管理業務は平成13年に原則自由化されたが、新規事業者の苦戦は続き、事実上JASRACの“独り勝ち”になっているのが実情である。

 この背景として公取委が問題視しているのが、楽曲を番組で大量に使用する放送局とJASRACが締結している包括利用契約である。楽曲の使用頻度に関係なく、放送事業収入の一定割合(1・5%)が支払われる契約で、昭和54年に導入された。

 放送局側にすれば、個々の楽曲ごとに利用状況を申告する手間が省ける。JASRAC側のチェック業務も大幅に軽減される。いわば双方の利害が一致したなかで続いてきた制度だといえる。

 ところが新規参入組にすれば、せっかく楽曲管理を受託しても、放送局側が手続きの煩雑さや新たな負担を嫌って、その楽曲使用を見合わせる傾向にある。その結果、権利者側も新規事業者への委託は躊躇しがちだという。

 映画や音楽、ゲームなどいわゆるコンテンツビジネス市場は、いまや十数兆円規模に達し、なお拡大の傾向にある。このうち放送分野の音楽著作権収入は260億円とされるが、99%はJASRACが占めている。

 デジタル技術の普及で無断複製や海賊版による被害が深刻化している。その意味でも著作権管理の重要性が指摘されており、この分野の競争促進は必要だ。

 しかし、権利者保護は当然として、作品の常識的引用にまで著作権管理者側の規制の動きが見られるのは気にかかる。著作物は個人の財産であると同時に社会全体の文化財だ。行き過ぎた規制は社会を息苦しくさせないだろうか。

20/04/25 06:06

【主張】著作権ビジネス 競争だけでは健全さ奪う

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【2008/04/25 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】大間原発許可 原子力政策に重要な一歩

 資源小国「日本」の原子力政策にとって重要な一歩である。

 経済産業省はJパワー(電源開発)が青森県大間町に建設を計画している原子力発電所の設置を許可した。

 大間原発は使用済み核燃料から再処理して取り出したプルトニウムとウランでつくる混合酸化物(MOX)燃料だけで動く世界初の商用炉で、日本の核燃料サイクル政策が大きく前進することを意味している。

 エネルギーの安定確保には、核燃料サイクルが重要である。青森県六ケ所村には日本原燃の使用済み核燃料再処理施設があり、今夏の本格操業をめざしている。しかし、燃料があってもそれを使用できる原発がなければ核燃料サイクルは実現できない。

 通常の原発で核燃料サイクルを実施する場合、使用するMOX燃料は全体の3分の1にとどまるが、大間は100%MOX燃料を使うことができる。

 MOX燃料の使用が始まらないと各原発の使用済み核燃料の貯蔵プールがいっぱいになって、個々の原発を止めざるを得なくなる事態が指摘されていただけに、大間が果たす役割は大きい。

 大間原発には世界の核不拡散体制を整備する意味もある。増大する電力需要をまかなうため、中東やアジアでも原発の建設計画が相次いでいる。そこで問題になるのは核不拡散とエネルギー供給の両立である。

 米政府は平成18年2月に「原発を運転するだけの国」と「使用済み核燃料を再処理して他国に燃料を供給する国」の2つに分ける国際協力構想を打ち出した。構想には19カ国が参加している。

 その中で、日本は核兵器を持たない唯一の核燃料供給国として認められている。日本がその資格があることを実証する上でも、中核施設となる大間原発の役割は重要である。

 電力各社は平成22年度までに既存原発16〜18基でMOX燃料の利用計画を立てている。大間の先には投入した燃料よりも多くの燃料が生まれる高速増殖炉の計画がある。しかし、相次ぐ不祥事や事故のために日本の原子力政策は停滞している。

 原子力利用は地球温暖化防止の観点からも欠かせない。大間は10年ぶりの新設許可である。今回の許可を原発に対する国民理解を広げる転機にしたい。

20/04/25 06:07

【主張】大間原発許可 原子力政策に重要な一歩

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【2008/04/25 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【産経抄】ビクターが国内の家庭用テレビ事業から撤退

 「女神の前髪をつかみなさい」。「テレビの父」と呼ばれた高柳健次郎が、若い技術者相手に好んで使った言葉だ。幸運の女神フォーチュンには、後ろの髪がない。先回りして、前髪をつかまないと捕まえられない。目先のことより、10年、20年先に求められる技術を見定めよ、というのだ。

▼ 自伝の『テレビ事始』によると、テレビ研究のきっかけは、米国で始まったラジオ放送だった。「無線で声を送れるのなら、映像も送れるのではないか」と考えたという。大正13年、新設の浜松高等工業に助教授として赴任して、本格的に取り組むことになる。

▼ 2年後の12月25日、実験室のブラウン管は、「イ」の文字を映し出した。世界最初の電子式テレビだった。学校の外では、号外の呼び声が「大正天皇崩御」を伝えていた。テレビの歴史は昭和とともに始まった。

▼ 当時のテレビは、穴の開いた回転円板を用いた機械式が先行していた。「機械式は、生まれてすぐに動き回れるようになるサルの子と同じ。電子式は人間の赤ちゃんのように、育児に時間がかかるが、成長すれば比較にならない能力を見せる」。高柳の主張が正しかった。

▼ 昭和21年に高柳を迎え入れた日本ビクターは、テレビ技術の名門として評価を高めてきた。51年に開発したVHSを家庭用ビデオの世界標準規格に導いた、高野鎮雄(しずお)ビデオ事業部長(当時)も、高柳の薫陶を受けた一人だ。

▼ そのビクターが国内の家庭用テレビ事業から撤退するという。薄型テレビは、もはや技術よりコストの勝負、資金力のあるメーカーだけが生き残るというのなら仕方がない。高柳スピリットを受け継いで、あらたな女神を捕まえるしかない。ビクター技術陣の奮起に期待したい。

20/04/18 05:12

【産経抄】4月18日

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【2008/04/18 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】ウィンドウズ 情報開示は時代の流れだ

 ソフトウエア最大手の米マイクロソフト(MS)が、パソコン用基本ソフト(OS)のウィンドウズなど主要製品について技術情報を原則無償公開すると発表した。

 ウィンドウズ支配が続く中でMSの技術情報開示が進めば、競合会社でも互換性のあるソフト開発が容易になる。相互運用性の向上は利用者の利便性を増す。業界全体の技術革新にも貢献すると期待できよう。

 ただ、ライバル企業や欧米の規制当局には、独占的立場を利用した新たな「顧客の囲い込み策」とする警戒論も根強い。MSには、あくまでも利用者利便の観点から透明性のある情報開示を求めたい。

 MSは、自社の技術情報を知的財産として秘匿することで他社のウィンドウズ向け応用ソフトの開発をしづらくし、その一方で、自社の応用ソフトを抱き合わせ販売することで巨大企業に成長してきた。

 だが、こうした排他的なビジネスモデルはもはや通用しなくなっている。世界の独禁当局から厳しい是正措置を受け続けたことも理由だが、時代にそぐわなくなったことが大きい。

 インターネットの急速な普及で、応用ソフトは今やネット上で無償で使える時代となった。パソコンごとに有料ソフトが必要なMS方式は、いずれ劣勢に回るとみられている。ソフト開発も、一般の技術者たちがネット上で無償で知恵を出し合い、開発からサポートまで連携するオープンソース化の流れが加速している。

 MS自身、3年ほど前から徐々にではあるが自社情報を開示する戦略に転じてきたのもそのためだ。情報をある程度オープンにすることで自陣営の参加者を増やし、優位性をより長期に維持しようというのがねらいだ。

 今回の動きもその一環だが、基幹製品のウィンドウズまで情報開示するというのは同社としては思い切った決断だ。並行して進められているヤフーの買収工作とともにMSにとっては懸命の生き残り策といえよう。

 MSにOS情報の開示義務を突きつけてきた欧州連合(EU)の欧州委員会は、今回の対応にも不十分との見解を示している。MS側は、そうした批判を払拭する上でも、中途半端な情報開示で終わらせてはならない。

20/02/24 05:33

【主張】ウィンドウズ 情報開示は時代の流れだ

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【2008/02/24 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【産経抄】「貧乏人は麦を食え」も今は昔

 今時、大臣が国会で「貧乏人は麦を食え」などと言ったら、審議は確実にストップする。今時でなく昭和25年にも大問題となった。発言したのは後に首相となる池田勇人蔵相である。米価値上げに関する答弁だが、実際はもう少しソフトな言い方だった。

▼ 「日本人は皆同じものを食べているが、所得の多いものは米、少ないものは麦本位としたい」である。米が高くなるが、麦も食べて我慢してほしいといった程度のことだった。これがマスコミによって「貧乏人は…」と「翻訳」されてしまったのである。

▼ 根底にはむしろ、日本人の「米信仰」のようなものがあったようだ。しかしそれから60年近くがたち、食生活も多様化してきた。パンやウドン、即席めんと「麦」の占める割合がうんと増えたのだ。「所得云々」はともかく、池田発言も今なら案外見直されるかもしれない。

▼ その麦−小麦の値段が大幅に上がる。農水省が4月から製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を30%もアップすると発表したのだ。昨年に続く引き上げで、食パンやめん類の値上がりは必至のようだ。関西では、たこ焼きがどうなるかも心配されているという。

▼ 今回の値上げの最大の理由は豪州での2年続きの干魃にあるらしい。だが他にも、バイオ燃料ブームにより米国で小麦よりトウモロコシを生産する農家が増えたり、中国が自国消費優先で輸出を規制したりという事情もある。とにかく世界は大変な小麦争奪戦なのだそうだ。

▼ 池田発言を逆手にとって急に「これからは米本位で」というわけにもいかない。平成18年版農業白書は、古い耕地に穀物を植えていくことなど、食料自給率アップの方針を打ち出している。たとえ泥縄のようでも急がねばなるまい。

20/02/17 05:12

【産経抄】2月17日

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【2008/02/17 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】丸尾直美 モノづくりにこだわり過ぎた

■ 経済復活のカギは金融資産活用に

≪日米経済逆転の原因≫

 「ナンバーワン」といわれるほどの経済繁栄を謳歌した日本は1990年代にバブル経済崩壊と長い経済停滞で、1人当たりGDP(国内総生産)も世界の十数位に転落した。この没落から立ち上がりかけた矢先、アメリカの住宅ローンの不良債権問題で、日本の株価も急落し、一層の地位低下が懸念される。

 もっとも今回の経済混乱は資産型であり、不良債権を抱える金融機関や企業に民間と政府が資金を投入することが、危機克服策になる。この点を了解している各国が問題会社に大量に資金を投入して不安の連鎖反応を阻止すれば、深刻な世界経済危機にはならないはずだ。

 ところが今回の日本の狼狽ぶりは「アメリカが風邪をひけば日本は肺炎になる」というかつての言葉を思い起こさせる。80年代の自信過剰気味だった日本がなぜこんなに弱気になり、経済的地位を低落させたのか。

 まず80年代から90年代にかけての日本と欧米の地位逆転がなぜ起こったかを考えてみよう。日本経済が世界で注目されたころには信頼と協力を重視する日本的経営と労使関係は、日本経済成功の原因の一つとして注目された。

 日本の金融機関は資産額で、世界の金融機関の上位を独占するほどにまで発展したが、銀行破産のリスクを避ける護送船団方式も長所と考えられた。いずれも市場競争にはなじまない方式による優位だった。

 こうした優位が80年代末に逆転した一つのきっかけは、市場競争を公正にという大義名分のもとで行われた国際金融市場競争のルール変更と護送船団の解体だった。金融市場情報の先駆国と金融IT(情報技術)で遅れていた国との国際金融市場による平等な条件での競争は敗北を意味した。しかし、市場ルールへの対応に遅れた日本にも責任があった。

≪日本の長所を生かせ≫

 小泉内閣はこの点を自覚し、日本経済の遅れていた市場化・国際化に力を入れてある程度、成功した。しかし、市場化・国際化を進めるだけでは、かつての日本の優位は戻らない。

 再逆転のためには、日本やアジアの急成長で自国の地位が低落したとき、自国の長所を生かし、相手の弱点を突く国家経済戦略をとったアメリカを見習うべきだ。アメリカの戦略は膨大な軍事予算にも助けられて発達したITを生かすことと、金融を市場経済になじんできた国に有利にすることだった。英語とドルをグローバル・スタンダード(世界標準)にして計り知れない利益を得たアメリカは、金融取引や企業会計などもアメリカの基準を世界基準にする経済戦略にも成功した。

 日本も現在の経済的立場を再逆転するためには日本の長所を生かす国家経済戦略を持つべきだ。モノづくりと輸出にこだわると、世界経済で後れをとることになる。世界の経済を動かしているのは今や金融資産である。日本でも資産価値の所得に対する比重は1970年代の数倍あり、資産大国だが、日本はその資産を活用していない。

 1兆ドル近い外貨準備、205兆円の年金積立金、1500兆円台の個人金融資産などを活用すると同時に、海外などから資産を流入させることが経済活性化の道である。

 生物化学、ナノ技術を生かす産業、バイオ、風力などの再生エネルギー産業など日本の優れた技術を生かす産業を育成し、環境基準の世界標準化などをアメリカに要請してもよい。

≪円高を有利につかえ≫

 おごっていた80年代の日本とは逆に、今の日本は自信を喪失している。アメリカの景気に陰りが見え円高になると、日本の株価が下がる。

 しかし、日本経済の飛躍が始まった昭和60年のプラザ合意のときを思い出したい。プラザ合意後、ドルの円レートは235円から1年後には120円台という円高になった。アメリカの経済は困難に直面し円高になったが、日本の経済は後退せず繁栄を加速する結果に連なった。

 円高になりアメリカの景気が後退したら今度は日本が繁栄すればよい。円高で輸出が10%減っても、直接にはGDPを7兆円減らすだけだが、500兆余の投資ファンドを持っていれば10%の円高で50兆円資産が増え、海外資産をそれだけ余分に買える。大きな海外投資ファンドを持つ欧米が自国通貨高を歓迎するのに、日本が円高を嘆くのはなぜか。

 円高、アメリカの景気後退のときに飛躍した80年代の日本を想起し、悲観的にならず、むしろチャンス到来と考えるような国家経済戦略を日本も持つべきである。(まるお なおみ=尚美学園大学客員教授)

20/02/06 07:03

【正論】丸尾直美 モノづくりにこだわり過ぎた

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【2008/02/06 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】中国経済 内需主導への転換を急げ

 中国国家統計局によると、同国の平成19年国内総生産(GDP)は24兆6619億元(1元は約15円)と、前年比11・4%増えた。

 これで5年連続の2ケタ成長となったが、最大の輸出先である米国の景気減速やインフレ圧力などの“黄信号”が点灯し始めている。中国は投資と輸出に過度に依存した成長から、環境に配慮した内需主導の成長へ転換を急ぐ必要がある。

 11%台半ばの成長率は、平成6年の13・1%に次ぐ13年ぶりの高さである。成長の原動力は引き続き投資と輸出で、固定資産投資(企業の設備投資や公共事業)が13兆7239億元と前年比25%増、貿易黒字(純輸出)が2622億ドルと同48%増えた。消費も消費財の小売総額が8兆9210億元と17%伸びた。

 一方で高度成長のひずみが深刻化している。大気や水の汚染が全国に広がり、国民の健康を脅かしている。インフレも高進しつつある。通年の消費者物価上昇率は4・8%だが、豚肉をはじめとした食料品価格の急騰で昨年8月以降は6%台で推移している。

 対照的に株式・不動産などの資産バブルにはかげりが出始めた。株価は上海総合指数が昨年10月16日の6124をピークに下げに転じ、5000台を割り込んでいる。高騰を続けた不動産も、上海、北京など大都市で取引が急減し、値崩れが始まっている。

 内外要因が重なり、中国経済は曲がり角にさしかかりつつある。昨年は欧米向け輸出で約3000億ドルの貿易黒字を稼いだが、欧米景気の減速と貿易摩擦で持続は困難だ。

 中国は過去30年間の投資と輸出依存の成長から、内需主導の安定成長へと経済構造の転換を急ぐべき時期を迎えている。中国のGDPは米ドル換算で約3兆4000億ドルとなり、ドイツに迫る世界4位の経済大国だ。

 その大国が40%台の超高貯蓄率で蓄えた資金で投資と輸出に奔走していては、世界経済も中国経済も安定しない。高貯蓄の原因は一部富裕層と多数の農民・都市貧困層の極端な所得格差や、社会保障制度の未整備にある。

 胡錦濤政権は公約の「調和のとれた社会」を構築するためにも、これらの分野での制度改革を進め国内市場を拡大する必要がある。

20/01/27 05:48

【主張】中国経済 内需主導への転換を急げ

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【2008/01/27 05:00】 | 経済 産業 資源 交通 | トラックバック(0) | コメント(0)