【正論】加藤秀俊 隠語まみれ官僚の悪文を読む

≪保険通知書の論理に驚く≫

 「後期高齢者医療保険料額決定通知書兼納入通知書」といういかめしい書類がきた。75歳未満のかたも、いずれは受け取られることになるだろうから、参考のためお読みいただきたい。

 この春以来の報道で知っていたから、通知におどろいたわけではないが、その書類のひどい悪文とむちゃくちゃな論理にびっくりした。

 まず保険料は「天引き」だ、ときいていたのにこの封筒に振替用紙がどっさりはいっている。どうやら毎月、郵便局で一定の金額を支払うことになっているらしい。これはどういうわけなのか。不審なことはきいてみなければならぬ。わたしはさっそく区役所の窓口に電話をかけた。

 担当者はなかなか感じのいい人物で、あ、それは通知書の裏面の「保険料の納め方」というところをみてください。「年金額が18万円未満の方」と「介護保険料と後期高齢者医療保険料が、年金額(厚生年金のことらしい)の2分の1を超えてしまう方」って書いてあるでしょう? あなたのばあいはこの「2分の1以上」に該当していると思われますので毎月ごじぶんで支払っていただくことになります、とおっしゃる。

 介護保険料にいくら払っているかは書類を引っ張り出せばわかるだろうが、なにしろこんどの医療保険料はいまはじめて教えられたもの。その合算が年金の2分の1以上であるかどうか、本人だってわからない。

 いずれにしても政府がそうおっしゃるのならしかたない。お上の事に間違いはございますまいから、という心境になり、スナオに毎月郵便振替をすることにした。われながら模範的後期高齢者だと自負している。

≪「特徴」が特別徴収とは≫

 しかし、この通知書はなんべん読みなおしても意味不明瞭である。

 例の「天引き」問題については「保険料は原則として年6回、公的年金から天引きされます」と明記されているからそれが「原則」であることはわかるが、この徴収方法は「特別徴収」とされている。それに対して、わたしのように毎月振替払いをするのは「普通徴収」と書かれている。「原則」が「特別」で「原則以外」が「普通」とはどういうわけなのですか、反対じゃありませんか? 電話口の相手にそういうと、そうおっしゃられればそうですね、オカシイですね、でも法律でそうなっているんです、という答え。

 この通知書には、「徴収決定理由」という欄がある。だが、そこに「特徴本算定非該当による普徴本算定」とあるのがわからない。さいわい電話の応対をしてくれているのは善良そうな人物。そこで、ことのついでに問い申さん、と「勧進帳」ばりの追加質問。ここに「特徴本算定…」うんぬん、って書いてありますね、このさいしょにある「特徴」っていうのはどういうことなんですか? しばらくあって相手は、あ、これは「特別徴収」の略なんです、と解説してくださった。

≪仲間内だけの独善性充満≫

 あはは、そりゃオカシイんじゃありませんか? 「特徴」っていうのはね、たとえばあの店のラーメンの「特徴」はさっぱりした塩味だとか、このメーカーの自動車の「特徴」は燃費がいいとか、そういうふうにものごとの「特色」をしめすことばじゃありませんか? あなたがたの職場の仲間内で「特別徴収」を「特徴」と省略なさるのは勝手だけど外部の人間にはわかりません。

 こういう略語を押しつけられるなんてまっぴらだ。どうも後味がよくない。とにかくこの通知書は「特別徴収」を「特徴」とするような仲間内だけに通用する勝手な隠語で綴られているのである。

 「普徴」というのは「普通徴収」の略だそうで、語呂合わせでいえば「符牒」じゃありませんか。

 それを市民に宛てた公文書に堂々と使うというのはまことに怪しからぬ。ヤクザ社会などは隠語で活動しているが、それでもシロウト相手のときには一般に通用する日本語でつきあってくれる。おもうに役所というのは隠語で国民を相手にして平然としているところなのである。

 窓口氏との会話はおもしろかった。でも、こんなこと、失礼だけどあなたにいっても仕方ありませんね。エライひとにいわなきゃダメですね、と慰めると、そうです、とおっしゃった。

 こういう窓口氏が日本には何千人もおられるはずである。それら末端のご担当にかわって、この文章、中央省庁の課長さんたちに読んでいただきたい。たぶん黙殺されるだろう、と覚悟しながらあえて官僚の独善的文章の事例をしめすことにした。(かとう ひでとし=社会学者)

20/08/25 06:32

【正論】加藤秀俊 隠語まみれ官僚の悪文を読む

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/25 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
人見絹枝以來の快擧

 ちょうど80年前の昭和3年8月2日は日本のスポーツ界にとって忘れられない日である。アムステルダム五輪の陸上三段跳びで織田幹雄選手が日本初の金メダルに輝いた。それだけでなく女子八百メートルで人見絹枝選手が2位に入ったからだ。

▼ この人見さん、実はスーパーレディーのはしりのような人である。身長168センチと今の女性にまじっても大柄だった。2年前の世界女子陸上で何と8種目に出場、走り幅跳びなど2種目に優勝している。五輪では百メートルで失敗、急遽八百にエントリーしての快挙だった。

▼ 帰国後、過労により24歳で亡くなったのは痛恨の極みだが、その人見さんの名前を昨日の新聞で見るとは思わなかった。北京の男子四百メートルリレーで日本が3位になった。これが陸上トラック種目では人見さん以来のメダルだという。何という長い歳月だろう。

▼ この四百メートルリレーでは、メダル候補だったという米国と英国が予選でバトン渡しを失敗、決勝に出られなかった。日本の銅メダルはラッキーだったという人もいる。しかしリレーでバトン渡しは重要な技術だ。日本チームは鍛錬を重ねたその技術に胸を張っていい。

▼ そういえば先日俳優の寺田農さんが本紙のコラムでこんなことを書いておられた。五輪は「運動会」を巨大にしたものじゃないか、運動会という「ゴッタ煮のお祭り」の楽しさがあるというのだ。同感だが、そのゴッタ煮の中でも、花形はリレーだったような気がする。

▼ 学級別でも地域別でも、リレーの選手に選ばれるのは夢であり、誇りでもあった。だから日本選手のバトン渡しには、運動会の「伝統」が込められているかもしれない。そう想像すれば「人見さん以来の快挙」がいっそう立派に思える。

20/08/24 06:07

【産経抄】8月24日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/24 05:00】 | 趣味 娯楽 競技 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
北京五輪閉幕 疑問残した支那流運営

■この経験をどう生かすのか

 世界の注目を集めた北京五輪が閉幕する。

 参加選手の総数でも、競技場・関連施設の規模でも史上最大級の大会だが、これまでのところ、運営自体に支障をきたす大きな混乱はなかった。中国政府や五輪関係者の努力を評価したい。

 競技面では世界中を沸かせた場面が数多くあった。北京最大のスターは、やはり競泳男子で7つの世界新記録を更新し、8種目制覇の偉業を達成したフェルプス選手(米国)だろう。

 陸上百、二百メートルで2冠のボルト選手(ジャマイカ)は、長い間米国が君臨してきた陸上短距離界に吹いた新風である。金メダル獲得競争を独走した中国選手団の活躍も五輪史に刻み込まれた。

≪よく踏ん張った日本≫

 金メダル9の日本選手団も、よく踏ん張った、とねぎらいたい。なかでも、五輪2大会連続で男子百メートル、二百メートルの平泳ぎを制した北島康介選手の奮闘が光る。

 ソフトボールでは過去3大会連続覇者の米国を抑えて日本チームが金をもぎとった。エース上野由岐子選手の3試合連投413球は特筆に値する。北京が五輪公式競技としてのソフトボールの最後の大会となったが、復活への希望をつなぐ熱投だった。

 多くの感動的な場面を生んだ北京五輪は、競技運営の面では「成功」といえよう。

 しかし、「人間の尊厳保持に重きをおく、平和な社会を推進する」との理想をうたうオリンピック憲章に照らしてみるとき、北京五輪に「合格」の評価を与えるには、いくつかの留保をつけざるをえない。

 まず、五輪開催国が最優先すべきである報道・言論の自由と人権が完全に保障されていたかどうか。これは疑わしい。

 開会式の前後に新疆ウイグル自治区で少数民族の過激派による武装警察などへの襲撃やテロがあり、多数が死傷した。現地に飛び事件の取材にあたった産経新聞記者を含む複数の邦人記者が短時間とはいえ拘束された事実は、民主主義社会における常識からすれば、異常だ。これについて、中国当局から納得できる回答はまだ得られていない。

 競技施設が集中する北京の五輪公園周辺では数回にわたり、欧米の人権活動家らが「チベットに自由を」などと書いた横断幕を広げ、そのたびに警官に排除された。中国当局が五輪取材の報道陣に対して公言したインターネット規制の全面解除は、五輪終盤になっても実現していない。

 言論の自由や人権については、北京五輪組織委員会の定例会見で毎回のように欧米メディアが質問したが、組織委側からは「デモは問題解決のためであって、デモのためのデモであってはならない」など紋切り型の回答が目立った。これでは、国際協調を打ち出した北京五輪のスローガン「一つの世界 一つの夢」が泣く。

≪効果の定着を期待する≫

 胡錦濤政権は北京五輪の開催を「中華民族百年の夢」とした。豪華絢爛たる開会式に続きメダル獲得競争を制することで一党独裁による改革・開放路線の正しさを内外に誇示しようとした。

 しかし、国際社会の評価を異常に気にするあまり、五輪施設周辺だけで軍や武装警察を含めて11万人もの治安要員を駆り出した。過剰な警備網は異様である。

 多くの外国人には奇異に見えたことはまだある。開会式の舞台に登場した少女が歌った革命歌曲は吹き替えだった。「中国の56民族を代表して」と紹介され、色とりどりの民族衣装姿で行進した子供たちもじつは大半が漢民族だった。五輪組織委はすべてが「最高のパフォーマンスを提供するため」の演出だという。

 五輪にあたり中国当局は対外イメージの悪い中国人のマナー改善教育に躍起だった。テレビの人気番組が「正しい応援のしかた」という特番を組んだほどだ。

 実際には日本の相手チームばかりを大声で応援する試合もあり、当局の思惑通りにはならなかったが、市内の地下鉄では年配の外国人に積極的に席を譲る学生の姿も見られた。五輪効果の定着に期待したい。

 政治、経済の両面で今後も影響力を強めるであろう中国(人)がどう変わっていくか。「百年の夢」の後を生きる五輪後世代が、中国の命運を握っている。

20/08/24 06:08

【主張】北京五輪閉幕 疑問残した中国流運営

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/24 05:00】 | 趣味 娯楽 競技 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
プラハの春 グルジアの夏

 チェコの生んだ作家、フランツ・カフカは子供時代にプラハ市内を転々としている。父親の仕事の都合で家族が転居をくり返していたからである。生まれて間もなく移り住んだのが、救国の英雄の名が付けられたバーツラフ広場の近くだった。

▼ 池内紀氏の『となりのカフカ』によれば、広場は「ポッカリとあいた長方形の箱」といった感じだという。カフカは広場に面したホテルのカフェで友人と落ち合い、おしゃべりしていた。そしてプラハ市民も、何かあると「この広場にやってくる」のだそうだ。

▼ カフカの死後44年たった昭和43年8月、ソ連軍がチェコ全土に侵攻してきたときもそうだった。市民たちはこの広場に集まり、ソ連の戦車を取り囲み抗議した。しかし圧倒的な軍事力の前にチェコの民主化「プラハの春」は押しつぶされてしまった。

▼ 当時、カフカの小説は日本でもよく読まれていた。若者たちにとって「知性」のシンボルのようなものだった。ところが、そのカフカの故地、プラハがソ連によって蹂躙されても、日本の若者が抗議の声を上げることは少なかった。むろん「文化人」たちもそうだった。

▼ 抗議の矛先はむしろ日本の政治や社会、米国へと向けられていた。社会主義への幻想がまだ強かったのか、他国を他国と思わぬソ連の横暴には「鈍感」だった。そしてこの鈍感さは、ソ連を継承するロシアによるグルジア侵攻が起きても、変わっていないようだ。

▼ 北京五輪の陰に隠れたということもある。だがロシア軍の居座りより、米露の対立激化を心配するような論調が現れては首をかしげたくなる。日本にとってグルジアはプラハ、そして北方領土へとつながる問題だということを忘れてもらっては困る。

20/08/23 05:18

【産経抄】8月23日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/23 05:00】 | 国防 軍事 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】ソフト金メダル 五輪に復帰し再び感動を

 北京五輪ソフトボールで日本が宿敵・米国を倒して悲願の金メダルを獲得した。日本の球技では1976年モントリオール五輪のバレーボール女子以来32年ぶりの五輪制覇となる快挙だ。金メダルが期待された「星野ジャパン」が準決勝で韓国に敗れただけに、一層輝きが増す。

 ソフトボールは野球以上に投手の力が勝敗を左右する競技である。日本の上野由岐子投手は2日間で3試合を1人で投げ抜き、投球数は400球を超えた。「なにがなんでも勝つ」と、一球一球魂を込めたピッチングはテレビ中継の映像を通じて日本中に伝わり、大きな感動を呼んだ。

 プロ野球ソフトバンクの王貞治監督までもが「うちの投手は投げ込みがたりないんじゃないか。一度招いて、話をしてもらわないといけないな」と、その鉄腕ぶりに敬意を表した。

 日本チームは平成8年のアトランタ五輪以来、いつも米国に苦杯をなめさせられ続け、悔しい思いをしてきた。厚く高い壁を26歳のエースを中心に一丸となって乗り越えた。「あきらめずに努力すれば、夢は必ずかなう」と頂点を目指した戦いは、次代を担う若者たちに勇気を与えたのではないだろうか。

 「わたしもオリンピックで金メダルを」という思いがスポーツのすそ野を広げ、レベルアップにつながる。しかし、ソフトボールは次回のロンドン五輪では「世界的に普及していない」という理由で野球とともに実施競技から外されることが決まっている。

 8年後の平成28年五輪に復活を目指す国際ソフトボール連盟は国際オリンピック委員会(IOC)のサマランチ前会長に協力を要請するなどロビー活動を活発化させ、「野球とははっきり区別すべきだ」と独自の戦いを推し進めている。

 来年10月のIOC総会で最終結論が出るが、同年6月の理事会でも審議されるだけに、手をこまねいている時間はない。

 日本として何ができるのか。平成28年五輪の開催都市招致レースに東京都が立候補しているのだから、ソフトボール復活に向けて、日本オリンピック委員会(JOC)も積極的に応援すべきだ。

 今回の快挙を生かすためにも次なる目標、晴れ舞台を用意するのが連盟、JOC関係者の責務ではないだろうか。

20/08/23 05:12

【主張】ソフト金メダル 五輪に復帰し再び感動を

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/23 05:00】 | 趣味 娯楽 競技 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
ソフトボール万歳

 フランスの作家、ドーデの短編小説「最後の授業」は、教科書に採用されたこともあって、日本人にはなじみ深い作品だ。普仏戦争でフランスが敗れ、明治4年にプロイセン領となったアルザス地方が舞台となる。

▼ ドイツ語以外の言葉を学校で教えることが禁止され、学校を辞めることになった仏語教師、アメル先生が最後の授業で、母国語の大切さを訴える。もっとも、仏独の国境地域に位置するこの地方は、戦争のたびに、帰属が入れ替わってきた。

▼ そもそもアルザス語は、独語の方言に近く、フランスに都合のいい物語にすぎないという批判もある。最後となるとわかって、初めてその大切さに気づいた生徒と教師が、いつくしむように過ごした時間を描いた作品、ととらえた方がいいのかもしれない。

▼ 北京五輪で、健闘が続く日本選手団のなかでも、ソフトボール選手の金メダルは、ひときわ輝きが増す。エースの上野由岐子投手(26)の、腕も折れよとばかりの熱投が、王者、アメリカをねじ伏せた。これまで湿りがちだった打線も火を噴いた。

▼ まさに、死闘という言葉が、ふさわしい試合の連続だった。いや、日本選手だけではない。世界最強のプライドをかけて、アメリカは日本の前に立ちはだかり、オーストラリアは、世界最速の上野から、土壇場でホームランを放つ粘りを見せた。金メダルへの執念だけでは、説明がつかない。4年後のロンドンで、正式競技からはずれる「最後の試合」で、見せてくれた最高のパフォーマンスだった。

▼ アメル先生は、黒板に「フランス万歳」と大きく書いて、「最後の授業」を終える。「ソフトボール万歳」。選手たちの叫びは、正式競技への復帰にきっとつながる、と信じたい。

20/08/22 06:03

【産経抄】8月22日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/22 05:00】 | 趣味 娯楽 競技 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】ロシア軍駐留継続 許されない不法な居座り

 グルジアの南オセチア紛争で、停戦を表明したロシア側が今度は地上軍の一部をグルジア領内に引き続き駐留させると発表した。

 これは、ロシア、グルジア両軍が戦闘開始前の配備地に戻るとした停戦合意の原則を無視したものだ。ロシア軍は今後長期にわたり、侵攻した隣国グルジアに居座ろうというのだろうか。そうであれば、グルジアの主権はないがしろにされ、同国の領土保全も揺らぐことになる。

 ロシア軍はグルジア領に「安全地帯」を設け、停戦を保障するという。だが、紛争の当事国が停戦監視に当たるのは国際常識に反する行為だ。

 グルジアでの紛争を契機に、ウクライナなどのロシア周辺諸国では、ロシアの強硬姿勢に危機感が急速に高まっている。

 ロシアはすでに、黒海に突き出たクリミア半島を領土とするウクライナに対しても、半島の領有権を主張して圧力をかけている。「ロシア国籍を持つ住民の保護」を口実にグルジアへ軍事侵攻し、駐留を継続しようとするロシア軍の存在は、ウクライナにも現実の脅威となった。

 欧米諸国には、グルジアの北大西洋条約機構(NATO)加盟を早めていたなら、ロシア軍の介入は防げたとする反省の声も上がっている。欧州諸国の多くはエネルギー供給をロシアに依存しており、対立は回避したいのが本音だ。そのことが、グルジアやウクライナのNATO加盟を遅らせる遠因ともなってきた。

 しかし、高騰するエネルギー資源を武器に国力を回復したロシアは、再び拡張主義を増長させている。このままではさらなる紛争を招きかねない。欧米は紛争の拡大予防という観点からも、グルジアやウクライナのNATO早期加盟を約束するときだろう。

 北方領土問題を抱える日本にもグルジア問題は無関係ではない。ソ連時代のロシアは第二次大戦後、日本固有の領土である北方四島に軍事侵攻し、60年以上も不法占拠し続けている。侵攻した他国の領土に駐留を続ける点で共通すると言っていい。

 日本は今年の主要国首脳会議(G8サミット)議長国である。「居座るならG8メンバー国の資格なし」ぐらいの強いメッセージが欲しい。ロシアの自制を促す努力を重ねることが重要だ。

20/08/22 06:04

【主張】ロシア軍駐留継続 許されない不法な居座り

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/22 05:00】 | 国防 軍事 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】タンカー乗っ取り やはり給油支援は重要だ

 日本のシーレーン(海上交通路)の安全がいかに脅かされているかを如実に示す事件だ。アフリカ・ソマリア沖で東京の海運会社が運航するパナマ船籍タンカーが21日、海賊に乗っ取られた。

 スエズ運河に直結し、欧州と中東、アジアを結ぶこの海域の安全は極めて重要だ。日本の国益そのものである。

 忘れてならないのは、安全を守っているのが欧米などの多国籍海軍であり、海上自衛隊の給油支援を受けていることだ。

 日本は法的な制約から、自国タンカーを守ることすら他国に依存せざるを得ない。海賊行為を排除することができない法的な不備は一刻も早く是正されねばならない。だが、現状では来年1月に期限が切れる給油支援を延長し、国際社会の一員としての責務を果たさなくてはなるまい。

 問題は国際共同行動を担うという政治の意思がいまだにはっきり見えないことだ。公明党だけでなく、自民党内からも新テロ対策特別措置法の延長に慎重論が強まっている。臨時国会の会期幅が決まらないのもそのためである。

 公明党は新テロ法延長の再議決を前提にした会期には反対との考えを自民党に伝えたが、国際平和協力を放り出そうというのか。太田昭宏公明党代表が昨年12月、「テロ新法は必要」と述べ、再議決に賛成したのは一体何だったのかと疑問を持たざるを得ない。

 シーファー駐日米大使は20日、麻生太郎自民党幹事長と会談し、新テロ法延長について「日米同盟だけでなく日本と国際社会との関係においても重要だ」と強調したことを重く受け止めたい。

 ソマリア沖では今年4月、日本郵船の15万トンタンカーが海賊船から、5発の対戦車ロケット砲を発射され、被弾した。あわやというとき、駆けつけたのはドイツの駆逐艦だった。

 昨年10月には東京の海運会社のケミカルタンカーが海賊に乗っ取られた。追跡し、海賊の逃走用ボートを沈めたのは米駆逐艦であった。海自の給油支援を中断した場合、日本はシーレーンの安全をどこに委ねるというのだろうか。

 国連安保理は6月、各国に海賊行為の制圧を求める決議を採択した。国連決議を重視する民主党は海賊掃討のための枠組みを主張すべきではなかったか。

 与野党とも日本が置かれている立場をもっと直視すべきだ。

20/08/22 06:04

【主張】タンカー乗っ取り やはり給油支援は重要だ

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/22 05:00】 | 国防 軍事 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】加地伸行 「靖国」を全戦没者慰霊の場に

≪やはり「心」の問題だ≫

 この8月15日、靖国神社は静かであった。ここ数年のあの騒ぎはいったい何だったのであろうか。

 中国はオリンピックや国内治安で忙しく、韓国は現政権打倒の勢力がその運動に熱中していて、靖国神社問題について何一つ騒がない。彼らにとって靖国神社問題は、所詮、対日政策カードの一枚にすぎず、彼らの心の問題ではなかったことをはっきりと示している。

 しかし、日本人にとって靖国神社問題は心の問題である。騒がしくない今のこのときにこそ、静かに語るべきであろう。

 これまで、靖国神社の存在の正当性について、多くの人によって語り尽くされたと言って過言でない。

 にもかかわらず、近隣諸国ならびに日本人の一部は、毎回、初歩的な話にもどるため、相変わらず同じ説明を繰り返さねばならない。その徒労から、おのずと反中・反韓とならざるをえなくなる。

 一方、日本人側からも、A級戦犯者の分祀要求などという、神道についての無知、あるいは国立戦没者追悼施設建立などという、中韓への阿諛追従をさらけだす者がいる。

≪松井大将の慰霊鎮魂の誠≫

 もういい。靖国神社問題は、近隣諸国との関係などといった外面的な問題ではなく、あくまでも日本人の心、内面的な問題なのであるから、日本人の主体性に基づいての生産的な議論をすべきであろう。

 そこで、私はここに靖国神社に対して新しい一つの提案をいたしたい。それは、日本人の心に沿ったありかたとしてである。

 その提案とは、靖国神社の現行の春秋二例大祭の他に、8月15日に夏季特別大祭を新しく設けていただきたいという願いである。

 靖国神社拝殿に向かって左に、鎮魂社という小さな社がひっそりと建っている。昭和40年の創建で、靖国神社に合祀されていない日本人神霊(例えば西郷隆盛)や全世界の戦死者・戦禍犠牲者(例えば湾岸戦争関係者)の神霊がそこに祀られている。

 その諸霊を英霊とともに新設の夏季特別大祭において降神して祭神とし、慰霊鎮魂の誠を尽くしていただきたいのである。

 A級戦犯として逮捕され、刑死した松井石根の主たる罪は昭和12年の南京事件の総責任者としてであった。しかし、松井大将は昭和14年に発願し、興亜観音の開眼(かいげん)法要を行い、敵味方ともに慰霊鎮魂し続けた。その観音寺(熱海市)には「支那事変日本戦没者霊位」「支那事変中華戦没者霊位」と記された二基の位牌(いはい)が並んでいる。

 退役した松井は戦前から昭和21年に戦犯として逮捕されるまで、雨の日も風の日も、2キロ以上の険しい山道を登って参詣し慰霊鎮魂を続けていたのであった。

≪敵味方なく夏季大祭を≫

 いや日本人だけではない。キューバ社会主義革命の指導者カストロは、7月26日の第一回革命記念祭において、名誉ある遺族席に、自軍兵士の両親のみならず、打倒した敵のバチスタ軍兵士の「御両親」(カストロのことば)も招いた。

 カストロ曰く、「われわれに抗して戦いに死んだ勇敢な兵士たちの妻や子供も、(我が軍死亡者のそれと)平等に尊敬され、保護され、援助をうけなければならない。彼ら(死んだ兵士たち)はキューバの不幸について責めがあるわけではない」と。このとき、カストロ27歳(堀田善衛『キューバ紀行』)。

 戦争においては、人間は己を正しいとし、それぞれの立場で戦う。憎みあって戦う。しかし、勇敢に戦った死者に対しては、生き残った者は敵味方の区別なく勇者として遇すべきであろう。

 われわれ日本人は、慰霊鎮魂を古代から行ってきた。敵への怨みも味方への親しみも越え、「怨親平等に回向(えこう)する」(松井のことば)のがわれわれ日本人である。

 そうした心のままに、8月15日の靖国神社(全国の護国神社)夏季特別大祭に参拝しよう。折しも盂蘭盆(うらぼん)の期間であり、人々は祖霊と有縁無縁(うえんむえん)一切精霊(いっさいしょうりょう)とに回向するときではないか。これは国民的心情である。

 それに基づけば、日本国を代表する首相であるならば、おのずと主体的に参拝することとなるであろう。主体的なのであるから、靖国神社問題を政策カードぐらいにしか思っていない外国勢力に右顧左眄(さべん)することはない。

 いや、首相だけではない。両陛下もまた日本人の心情、「怨親平等」を深く確(しか)と理解しておられるはずである。

 「すべての戦没者のために、平和のために祈る」ことを靖国神社が具体的に積極的に示されんことを願ってやまない。(かじ のぶゆき=立命館大学教授、大阪大学名誉教授)

20/08/22 06:06

【正論】加地伸行 「靖国」を全戦没者慰霊の場に

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/22 05:00】 | 日本 歴史 伝統 文化 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】鳥居民 金門砲撃五十年と北京首脳の狙い

≪大躍進さなかの大騒ぎ≫

 8月23日の午後6時半、金門島を囲む大陸沿岸に据えられた500門の大砲が一斉に火を噴いた。昭和33年のことだ。その夕刻から8月の末まで、中国は金門の10万の将兵を兵糧攻めにするのか、上陸作戦に打って出るのか、アメリカはどう対応するのかと全世界はかたずを呑んで見守ることになった。

 同時に中国側は脅迫と挑発の戦いもつづけた。だが、砲撃はやがて1日おきとなり、散発となり、いつかやんだ。

 その砲撃開始の日から50年になる。中国専門家はその砲撃戦を説明して、毛沢東は金門を奪取するつもりだったのだが、それに失敗したのだと説いてきている。

 ところで、昭和33年の中国は、金門砲撃の騒ぎとはべつに、大変な年だった。とてつもない年だったと言うべきだろう。

 毛は大躍進を号令した。省党書記はこぞって大豊作を報告し、その年の末には食糧と綿花は前年生産量の倍となった。鋼塊は増産目標の達成数字を何回も訂正して、年末にはこれまた前年の生産量の倍となった。

 大躍進の激動のさなか、さらに毛は全国の党書記に命じて、人民公社を創設させた。この共同体のなかに、農、工、商、学、兵のすべてを一体化させてしまうのだと毛は説き、軍事組織をそのまま労働組織にするのだと主張し、16歳から50歳までの男女を集め、民兵隊をつくらせた。

≪「まことにおもしろい」≫

 そこで毛沢東がやらせた金門砲撃が、かれが同じときに命じた大躍進と人民公社の建設と繋がりがあったにちがいないとだれもが考えよう。

 だが、その証拠がないことから、はじめに記したとおり、毛は金門を奪取しようとして、それに失敗したのだと語るだけのことになっている。

 なぜ砲撃したのか、じつは毛本人が明らかにしている。

 15年前、平成5年12月26日は毛沢東生誕100周年だった。その2日前の「人民日報」に金門の戦いを指揮した葉飛という高級軍人の回想が掲載されている。

 そのなかで毛沢東が部下の国防部長、彭徳懐と中央軍事委員会秘書長の黄克誠に宛てた手紙を載せている。つぎのような内容である。「徳懐、克誠同志、眠れないままに考えてみた。金門を砲撃する。しばらくして適当なときに撃つのをやめて様子を探る」という書き出しだ。

「…しばらくのあいだ砲撃しないで、時機を見て、また砲撃する。もしも相手が●州、汕頭、福州、杭州などを攻撃してくればまことに面白い。こういう考えを君たちはどう思うか」

 毛はこの前年から金門攻撃のための兵站用の鉄道を敷かせ、金門島をぐるりと包囲する沿岸に大砲陣地をつくらせていた。そしていよいよ砲撃開始の直前になって、毛は彭徳懐、黄克誠に自分の考えを明かしたのである。

≪毛と江の本当の思惑は≫

 金門を砲撃する。アメリカ側がそれに対抗して、汕頭、福州、杭州を砲撃してきたら、「まことに面白い」と毛は自分の本心を明かした。

 毛のロマンチックな地上の楽園の建設は、かれが頭脳の平衡を失い、不可能な夢を追っていただけのことであったといまになれば、研究者も、伝記作家も遠慮会釈なくこきおろしている。

 だが、毛はそのときも抜け目なく計算していた。大衆が本当は嫌っていること、望んでいないことをやらせるためには、かれらをどのような状況に置いたらよいのかを承知していた。

 福州が砲撃された、杭州が砲撃された、アメリカ軍が攻めてくる、蒋介石を助け、地主のために土地を奪い返しにやって来ると国内向けに大々的に宣伝する。われわれの土地を守り抜くのだと「全民武装」を説き、編成した民兵隊を人民公社の大黒柱にする。

 毛沢東の金門攻撃はこんな狙いを隠していた。あとになって口惜しがり、アイゼンハワーの肝っ玉がもう少し大きければ、杭州や福州を砲撃させることになって、大躍進と人民公社はあんな結末とはならなかったのにと毛は負け惜しみを言ったのであろうか。

 つまらぬ蛇足を加えた。もうひとつ蛇足を記そう。前に本欄で述べたことの繰り返しになる。平成8年3月、台湾の総統選挙戦のさなか、江沢民が台湾の基隆と高雄の沖合にミサイルを着弾させたことがある。李登輝を落選させようとしたのだとだれもが解釈した。台湾に戒厳令を復活させ、総統選挙を断念させようとしたのが、江沢民の本当の狙いだった。独裁国民党の李登輝が総統をつづけて一向に構わなかった。

 民主的な国が隣に誕生することが、北京の指導者は恐ろしかった。いまもそれは同じだ。(とりい たみ=評論家)

●=さんずいに章

20/08/21 05:16

【正論】鳥居民 金門砲撃50年と北京首脳の狙い

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/21 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】若ノ鵬逮捕 因習を排し改革を目指せ

 不祥事の連鎖が止まらない大相撲界で、今度はロシア出身の幕内力士、若ノ鵬が大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。監督官庁として文部科学省の鈴木恒夫大臣が「前代未聞、遺憾の極み」と批判したが、現役の関取(十両以上)から逮捕者が出たのは初めてという深刻な事態は、相撲ファンを裏切る背信行為と断罪されても仕方がない。

 日本相撲協会は、きょう21日に緊急理事会を開き、若ノ鵬の解雇と、師匠の間垣親方(元横綱二代目若乃花)の理事降格について検討する。関係者を処分するのは当然だが、北の湖理事長をはじめ幹部の責任も重大だ。

 最近の相撲界は、朝青龍をめぐる一連の騒動、時津風部屋の傷害致死事件とトラブル続きで、そのつど、北の湖理事長は「弟子の指導は師匠の責任」と、直接関与を避ける発言を繰り返してきた。相撲は他のスポーツに比べ、より濃密な師弟関係によって成り立っているとはいえ、協会幹部の傍観者的な態度と不祥事の連鎖が無関係とは言いがたい。

 若ノ鵬は勝負に負けると、悔しさを支度部屋の風呂の棚を壊すことで晴らそうとしたり、巡業の集合時間に遅刻したり、独身者は部屋住みが原則なのに、マンションで一人暮らしするなど、わがままな行動を繰り返してきた。

 外国人力士は豊かな素質とハングリー精神で出世が早い。その一方で、日本人の若者でさえ戸惑う相撲界の慣習にとけ込むのは難しく、孤独感にさいなまれるのかもしれない。

 20歳の弟子を支えきれなかった間垣親方の指導力不足を指摘せざるを得ないが、協会としても打つ手があったのではないか。「いつかこうなるのではと思っていた」(相撲関係者)というのなら、なぜ注意しなかったのか。

 現在、入門した新弟子を教育する相撲教習所がある。実技のほか相撲の歴史や書道などを教えている。それにとどまらず、一般企業や司法関係者らを招き社会人としての心構えも教えて、視野を広げることが肝要であろう。

 相撲界には「われわれにはわれわれだけの常識がある」という意識がはびこっている。独善的な考え方や驕りを捨て去らないと、時代から取り残され、ファンからも見放されるだろう。

 相撲協会が改革に向けて、一歩踏み出すことを期待したい。

20/08/21 05:13

【主張】若ノ鵬逮捕 因習を排し改革を目指せ

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/21 05:00】 | 日本 歴史 伝統 文化 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】古田博司 朝鮮民族の復讐のカタルシス

≪拉致と竹島支配の共通性≫

 言いにくいことだが、北朝鮮による日本人拉致と韓国による竹島実効支配は、人間と領土という違いこそあれ、じつは朝鮮民族の日本に対する意識の地平においては同じものである。それは、日本の主権を侵して奪い去ってやったという彼らの「復讐のカタルシス」に由来するものであり、過去の被植民地化という恥辱から生ずる、ストレスやコンプレックスの解消の素材であり続けていると言わねばならない。

 ここに彼らがこのカタルシスを手放すことがなかなか難しい原因があると思われる。

 ならば韓国相手の竹島の方は、国際司法の場で民主的に決着をつければ良いではないかと、人は言うかもしれない。しかし、国際社会というのは本来アナーキーなもので、出てこいと言われて、負けると分かっている法廷に、のこのこと出かけていく者もいなければ、召喚を命令できる明確な主体も存在しない。

 人間は理性にのっとっていれば、普遍的な価値観を共有でき、国際正義に基づく解決が当事者間の紛争を未然に防ぐのだというモダンな理想は、「後近代」の現代ではもはや夢をさそう物語にもならないのではないだろうか。

≪「反日のうねり」に転化せず≫

 ここのところの中学社会科の新学習指導要領の解説書における竹島問題をめぐる韓国民の反応も、日本の一部マスコミの期待にもかかわらず、昭和50年代のような大きな反日のうねりには転化しなかった。韓国でもようやく後近代が本格化しつつあり、誰かが普遍的な価値観をになって人々を扇動できるような時代がもう終わったということなのである。

 すでに手に入れているのだから、なにを騒ぐ必要があるのかと、効率性をまず考えるのがポストモダンな生き方というものである。だから韓国政府は実効支配が完璧だという政治的パフォーマンスを演じればそれで済むのだろう。

 しかしこのような後近代の情況は、韓国民のモダンな物語をも確実に切り崩さずにはおかない。たとえば、韓国が日本に強要し続けた「正しい歴史の認識」がそれである。じつは現在の歴史記述に関連する教科書では、国定のもの以外に検定数種がすでに多彩に使われているのが現状となっている。

 中学校の社会では9社10種類、高校の韓国近・現代史では6社6種類、世界史は3社3種類があり、19種類もの「正しい歴史の認識」がゆるい検定下で別に存在するという矛盾が生じている。

 この事実に気づいているのか、教科書の中にはすでに開き直った記述も見られ、「我々の歴史を正しく見るということは重要なことだ。問題はどのようにすれば我々の歴史を正しく見られるかという事実だ」(『高等学校 世界史』教学社)と、自己の失政の歴史をも正しいものと認識したいという、意欲あふれる教科書まで登場している。

≪先祖批判を許さない儒教≫

 これらすべてを精読したところ、実りある知見を得たのでここで紹介しておきたい。それは彼らが何故これほどまでに自らの歴史を正しいものとしたがるのかという根本の動機である。管見ではそれは、「儒教道徳上、失敗した先祖を非難することができない」という伝統的で圧倒的なプレッシャーによるのだと思われるのである。

 そのカタルシスのためには、たとえ植民地化されるという「失政」を犯そうと、自らの先祖は絶対に正しいことをしたと言わなければならない。

 そのような儒教的な考えがどんなに偏狭であることか、それは彼らの世界史関連の記述を見ればよく分かる。20世紀は列強による植民地化の時代であったが、韓国人は多くの歴史教科書で平然と被植民地諸国を見くだすのである。

 「東南アジアの諸国は次第にヨーロッパ強大国の原料供給地と植民地に転落した」のであり、「エジプトは英国の保護国に転落した」し、「インドは英国の原料供給地と商品市場に転落した」と、記述する。

 しかし、自分たちに関しては、そうは言いたくない。「朝鮮は日本の植民地支配を受けることになった」のであり、「日帝は朝鮮の国権を侵奪した」のだと、他国に押しつけようとする「転落」歴史観から、自分たちだけは絶えず逃れ出る記述をこころみるのである。

 敢えて厳しい見方をすれば、拉致問題も、竹島問題も、歴史教科書問題も彼らの卑小なるカタルシスが根にある。ゆえに、すべての解決は彼らの謙虚さと自省から始まるのであり、そのような作業は少数だが心ある韓国人の間から、すでに曙光のように輝き始めているものと私は見ている。(ふるた ひろし=筑波大学大学院教授)

20/08/20 06:31

【正論】古田博司 朝鮮民族の復讐のカタルシス

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/20 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
わら一本の革命

 自然農法の提唱者として知られる福岡正信さんは、70年前、横浜税関の植物検査課で、病気害虫の研究に没頭していた。といっても研究室に閉じこもっていたわけではない。カメラに凝って、桟橋で見つけた美人に頼み込み、写真を撮らせてもらったことがある。

▼ 現像して友達に見せたら、女優の高峰三枝子だと教えられた。南京街のダンスホールで、歌手の淡谷のり子と踊ったこともある。そんなある日、急性肺炎を引き起こし、入院中に突然死の恐怖にとりつかれた。退院して、一晩さまよい、街を見下ろす丘の上で、夜明けを迎えた。

▼ 「人間は何もしなくていい」。こんな考えが突然ひらめいたという。故郷の愛媛県伊予市に帰り、ミカン作りや米作りで、考えが正しいことを証明しようとした。16日、95歳の天寿を全うした福岡さんは、著書の『わら一本の革命』のなかで、自然農法を始めたきっかけをこのように語っている。

▼ 耕さない。一切の農薬、化学肥料を使わない。田植え、草取りもしない。だから、田んぼは草ぼうぼう、果樹園はジャングルのようだった。それでいて、収穫量は普通の水田の倍近くあった。果樹園からは、夏ミカン、ウメ、サトイモ、ダイコンなど100種類近くの作物がとれた。

▼ といっても、福岡さんの自然農法は、放任とは違う。人間が何の手を加える必要がない状態を作りあげるまで、試行錯誤が続いた。晩年にはアジア、アフリカ各国で、砂漠緑化にも取り組んだ。

▼ 『わら一本の革命』には、「国民皆農」の提案もある。「自然農法で日曜日のレジャーとして農作して」、生活の基盤を作っておきなさい、と。30年以上も前から、農政の行き詰まりと食糧危機の到来を見通していたに違いない。

20/08/19 05:42

【産経抄】8月19日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/19 05:00】 | 自然 生活 社会 医療 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】調査捕鯨妨害 立件こそ最大の抑止策だ

 南極海での日本の調査捕鯨船に対する米環境保護団体シー・シェパード(SS)による妨害行為について、日本の捜査当局は実行犯として米国籍と英国籍の男計3人を特定、威力業務妨害容疑で逮捕状を取った。

 ロープを海中に投下してスクリューに絡ませたり、抗議船で体当たりしたりするなど、妨害はテロ・海賊行為にも等しい。国際条約にも明らかに違反している。日本として断固たる措置に出るのは当然のことである。

 日本などの捕鯨国と米国や豪州など反捕鯨国との間には、鯨をめぐる文化の違いから根深い摩擦があるのは事実だ。しかし、日本の調査捕鯨は鯨類の資源量などを研究するデータ収集が主目的であって、なにより国際捕鯨取締条約に基づいた正当な活動であることを忘れてはならない。

 ところがSSは、この事実や再三にわたる日本の事前警告をことごとく無視し、抗議と称して過激な妨害活動を続けてきた。調査捕鯨船団の乗組員をねらって発煙筒や薬品入りのビンを投げつけ、負傷させるという常軌を逸した悪質極まりない行為もあった。

 町村信孝官房長官は「いかなる主張があるにせよ、物理的な妨害によって生命の危険を脅かされる事態は許されない」と強調した。正論といえよう。

 反捕鯨国を含め、国際社会はSSの過激な行動には厳しい目を向けている。国際捕鯨委員会(IWC)も事件後のことし3月、非難の声明を採択している。

 今回の容疑者特定には、日本の捜査共助要請に対する関係国の協力が不可欠だった。米英両国とも反捕鯨の立場にはあるが、捕鯨への賛否と暴力による妨害行為の是非は峻別して考えるべきだとする判断があったからだろう。

 日本の捜査当局は国外犯として国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、3人を国際手配する方針である。だが実際の容疑者逮捕など立件については実効性に疑問の声も少なからず聞かれる。

 政府として、今後も捕鯨への理解形成に最大限の努力を続ける必要があることはもちろんだ。同時に、関係国に対しても犯罪人引渡条約の有無にかかわらず、毅然と容疑者の身柄拘束、日本への引き渡しを求めるべきだろう。

 それこそが、危険な妨害行為に対する何よりも強力な再発抑止策につながるはずだ。

20/08/19 05:43

【主張】調査捕鯨妨害 立件こそ最大の抑止策だ

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/19 05:00】 | 事件 犯罪 司法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】民主党代表選 政権担当能力示す好機に

 9月21日投開票される民主党代表選まで約1カ月だが、小沢一郎代表の無投票3選の流れが強まっている。

 福田改造内閣の発足などで衆院選が近づいたとの判断から、小沢氏を中心に党が結束すべきだとの意見が広がり、対抗馬擁立論は押しつぶされそうな格好だ。

 代表選を通じた論争は、政策面の不透明感を払拭し、政権担当能力を示す好機である。無投票で終われば、その機会は失われる。

 今からでも遅くはない。立候補を検討している議員は、政権交代を目指す政党としてどんな国づくりを目指すのか、小沢氏と論じ合うことを決断してほしい。

 少なからぬ国民が不安を感じているのは、民主党が政権を担える責任政党なのかである。

 民主党は、消費税を年金に投入した上で、子供手当の創設や高校授業料の無償化など盛りだくさんの施策を掲げ、その財源は補助金見直しや行政経費カットなどでまかなうとしている。だが、前原誠司副代表は「まともな政権運営はできない」と語っている。

 安全保障面でも小沢氏の「国連至上主義」ともいえる対応では日米同盟関係に悪影響を与えかねないと党内から指摘されている。

 一方、行政の無駄遣いや特別会計の「埋蔵金」をめぐる議論など、自民党が取り組んでいるテーマは、民主党が発掘したものだ。道路行政の問題点を洗い出し、福田康夫首相が道路特定財源廃止を決断する流れも作ったといえよう。参院で主導権を握り、政府と対峙する力は大いに向上した。

 しかし、日銀総裁ポストの空白を生じさせ、揮発油(ガソリン)税の暫定税率廃止で歳入に穴をあけるなど、国政の停滞、混乱を招き、政局至上主義と呼ばれる党の姿勢も浮き彫りにした。

 この小沢氏の党運営に対し、違和感を持つ議員も少なくないようだ。それなのに真っ向から政策論争を提起しようとの意見には党内の支持が広がらない。「物言えば唇寒し」の声も聞こえてくる。

 出馬が取りざたされていた岡田克也、前原両副代表は不出馬を表明した。若手議員らの支持を受けた野田佳彦広報委員長、枝野幸男元政調会長も立候補の決断には至っていない。

 「オープンな政治」を標榜してきた民主党はどこへいったのか。政権交代したら、どうなるかこそ、語るべきときだ。

20/08/19 05:44

【主張】民主党代表選 政権担当能力示す好機に

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/19 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】平松茂雄 防衛戦略を領域重視に転換を

≪沖縄戦の教訓と防衛改革≫

 防衛省が来年度に見直す「防衛計画の大綱」で、陸上自衛隊が全国を5分割してそれぞれの地域を防衛する「方面総監部」制度を廃止し、指揮・命令系統を一元化する「陸上総隊」の創設を検討するとの報道があった。主に着上陸侵攻を想定した冷戦時代の体制を、テロやゲリラ攻撃などに備えて一体化し、機動力を高めるのが狙いという。

 着上陸侵攻とは敵が上陸してくることだから、上陸される前に日本の海が侵略され、その上空は敵に侵犯されて、わが国は本州、北海道、四国、九州だけになっているばかりか、敵の空爆や艦砲攻撃を受けて破壊されている。簡単に言えば「本土決戦」だ。そのような事態はありうるのか。太平洋戦争を考えてみればいいだろう。

 戦争末期、軍部は天皇陛下の御在所を長野県松代の山中に移し、本土を焦土と化しても決戦し「玉砕」すると声高に叫んだ。当時筆者は国民学校4年で「軍国少年」だったから、いまでもはっきり覚えている。だが太平洋戦争は沖縄戦で終わり、「本土決戦」はなかった。英断である。沖縄の尊い犠牲で戦争は終わったのだ。

 沖縄戦のわが国にとっての意味はそこにあるのだが、沖縄戦で「集団自決」の命令があったのか、なかったのかが争われ、裁判にまでなっている。わが国にとって今一番大事なことは、沖縄戦を二度と繰り返してはならないということだ。陸上自衛隊が戦車や装甲車で国土を防衛するような事態があってはならない防衛体制を整えることだ。

≪守るべき領域を明確に≫

 幸いなことに、わが国は広大な海に囲まれている。陸地の国土面積は小さいが、海域面積は陸地国土面積の約12倍、世界で第6位の広さである。わが国がそのように広大な海域を保有しているのは、その海域に多数の島嶼が散在するからである。

 だがわが国政府の消極的な施策から、その海域を形成する基点となる北方領土はソ連・ロシア、竹島は韓国に不当に占拠されており、東シナ海では尖閣諸島の領有権および大陸棚の石油資源開発に関して中国・台湾との間でいつ紛争が起きてもおかしくない状態である。

 誠に遺憾なことは、こうした重要な現実に、政府もマスコミも、従って国民も、これまでほとんど無関心であったことだ。学校でもほとんど教えなかった。自衛隊も関心がなかった。筆者は自衛隊の学校や部隊での講義や講話で、できるだけこのことに触れ、「これがあなた方が守る領域ですよ」と話しているが、ある時「われわれの任務をこれだけはっきりと示していただいたのは先生が初めてです」といわれて、びっくりしたことがある。

 この数年来わが国で、にわかに日本は海洋国家、海洋民族とか言われるようになっている。だがわが国は海洋国家であり、日本人は海洋民族であろうか。日本は農耕社会であり、日本人は農耕民族である。日本は海に囲まれ、山の幸だけでなく海の幸にも恵まれて、魚を食べてきたというだけである。

 明治以来、海軍を作り、造船、海運が発展したといっても、日本人の民族性は何も変っていない。国連海洋法条約が締結され、世界が「海洋の時代」に入ったとき、わが国では魚の値段が高くなるというのが大方の関心事であったと筆者は記憶している。それは今でも大して変っていない。

≪敵の上陸後では遅すぎる≫

 防衛大綱改定の詳細を筆者は知らないが、日本の防衛の基本は「日本の海」を守ることにあり、それには海域を守るだけでなく、その上空、なによりも世界第6位の海域の根拠となる島嶼、簡単に言えば離れ島の防衛である。

 ところがその海域を画定する上で重要な北方領土、竹島、尖閣諸島は隣国との間に、先にのべたように、簡単に解決できない政治問題があって、わが国の「海域」は現実には狭められている。とくに中国との間に難しい問題がある東シナ海には、たくさんの島嶼があるが、沖縄本島を除いて、それらの島嶼に自衛隊の実動部隊は駐屯していない。

 わが国がなさねばならない課題は、防衛戦略の根本的な転換である。着上陸侵略への対処という時代にそぐわない陸上部隊の改編だけでなく、陸上部隊の数を大幅に減らし、北海道中心の部隊配置を改めて、陸上部隊を離島に配備するとともに、小規模でも海上・航空の部隊と統合作戦できる機動力のある部隊を編成する必要がある。

 なによりも隣国に気兼ねすることなく、周辺海域とその上空を防衛する海上戦力と防空戦力の思い切った拡充を断行する決断が日本政府の喫緊の課題である。敵が上陸してきた時では遅いのだ。(ひらまつ しげお=中国軍事専門家)

20/08/19 05:50

【正論】平松茂雄 防衛戦略を領域重視に転換を

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/19 05:00】 | 国防 軍事 | トラックバック(0) | コメント(0)
支那人女スパイに御用心

 日中戦争時の上海に、日本人の母と中国人の父を持つ女スパイがいた。その名を鄭●如という。とびきりの美貌と母親から教わった日本語を武器に、抗日組織のために対日諜報活動に携わるなか、26歳で銃殺された。

▼ 半年ほど前上海を舞台に、日本の傀儡政権の特務機関を率いる男と、男を暗殺するために送り込まれた女スパイが虚々実々の駆け引きを繰り広げる映画「ラスト、コーション」のことを書いた。主人公のモデルとなったのが、彼女だ。

▼ 近衛文麿元首相の長男で、「最後の貴公子」と呼ばれた文隆の生涯を描いた小説『夢顔さんによろしく』(西木正明著)では、文隆の恋人として登場する。文隆は彼女の手引きで、蒋介石政権と独自の和平交渉を試みるが、軍に阻まれる。やがて兵役にとられ、満州に送られた。戦後はソ連によって、シベリアに抑留されたまま生涯を終えたという。

▼ 先週の土曜日、日本テレビで放映された「ふたつの祖国をもつ女諜報員」は、そんな彼女の実像に迫ったドキュメンタリー・ドラマだった(大阪・読売テレビは24日放映)。両親思いで映画が大好きだったという彼女の短い生涯は、映画や小説以上に悲劇的だ。

▼ 女スパイの歴史はいまも続く。最近では、上海の日本総領事館に勤務する電信官の自殺事件や海上自衛隊の1等海曹による内部資料の持ち出しに、中国人女性がかかわったことがわかっている。木村正人ロンドン特派員によれば、今年1月、ブラウン英首相の訪中に同行した側近も、女スパイの「ハニー・トラップ」にはまった。

▼ 美女と一夜をともにしたら、朝には美女とともに携帯端末が消えていた。華やかな北京五輪の舞台裏でも、女スパイが暗躍しているのかもしれない。

●=くさかんむりに頻

20/08/18 04:56

【産経抄】8月18日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/18 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】カラジッチ裁判 真相を究明し民族和解を

 20万人以上の犠牲を出したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の戦犯として起訴されたセルビア人指導者、ラドバン・カラジッチ被告の裁判が旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で始まった。

 カラジッチ被告は平成4〜7年に起きたボスニア内戦でセルビア人共和国大統領を務めるなど、過激な民族主義勢力の指導者として権勢をふるった。とくに平成7年7月、スレブレニツァで起きたイスラム系住民約8000人の虐殺事件を含めて大量殺人、人道に対する罪など11件の罪状に問われている。

 国連決議で設置された同戦犯法廷に起訴されたものの、平成8年に大統領を辞任して姿を消し、7月下旬、セルビア政府に拘束されるまで13年間の逃亡生活を送った。セルビア人の間では、今も「民族の英雄」とする空気がある。

 旧ユーゴ戦犯法廷ではこれまでに161人が訴追され、56人が有罪となった。しかし、最大の戦犯とされたミロシェビッチ被告(新ユーゴ大統領)が裁判中に病死したこともあって、欧州で「第二次大戦後最悪の民族紛争」と呼ばれた内戦当時の真相は今も完全には解明されていない。

 とりわけ多くの犠牲を生んだボスニアでは、他民族や異教徒を大量粛清する「民族浄化」という凄惨な言葉まで生まれた。民族間の対立感情は、その後もコソボなどに舞台を広げて各地でくすぶっているのが実情だ。

 民族浄化思想は、クロアチア人勢力などの間にもあったとされるだけに、カラジッチ被告らの裁判を通じて冷静に真実を解明することが必要だ。その上で、過去の過ちを二度と繰り返さないように、各国が民族和解の政治に取り組まなければならない。

 セルビアでは従来の民族主義政権に代わって、欧州連合(EU)加盟をめざすツベトコビッチ新政権が誕生したことが、カラジッチ被告拘束のきっかけとなった。EUの静かな説得が功を奏した形だが、同国の民族主義者らの間には新政権のEU協調路線に強い不満もあり、懸念が残されている。

 だがセルビアに限らず、過去を向いた偏狭な民族主義に未来はない。セルビア政府には国民をさらに説得し、EUや国連など関係当局とも協力して公正な裁判に協力するよう望みたい。それが犠牲者らへの責務であり、バルカンの平和と安定を確立する道だ。

20/08/18 04:56

【主張】カラジッチ裁判 真相を究明し民族和解を

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/18 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
北京五輪 五十六民族もヤラセ

 水泳・北島康介の快挙に拍手し、柔道・石井慧の金にほっとし、星野ジャパンや女子レスリングの熱闘に手に汗を握っている間に北京五輪の前半戦が終わった。始まる前にはなんだかんだといっても、メディアは(小紙もそうだが)五輪一色だ。

▼ 開会式の目を見張る壮麗さの舞台裏で、演出という名の偽装が数多く施されていたのもご愛嬌かもしれぬ。テレビ中継で花火をCG(コンピューターグラフィックス)合成したのは序の口で、美少女の革命歌曲独唱も別の少女の吹き替えだった。

▼ それもこれも中国の国威を発揚するための演出だ、といわれれば、口に入る食物の偽装ではないから目くじらを立てるほどではないだろう。だが、「中国の56民族を代表して」民族衣装を着て行進した子供たちのほとんどが、漢民族だったのがバレたのはなんとも稚拙で後味が悪い。

▼ チベットやウイグルなど少数民族の子供たちを参加させるのに何か不都合でもあったのだろうか。そういえば、72年前にヒトラーが開会宣言したベルリン五輪の記録映画の題名も「民族の祭典」だった。

▼ オリンピックが「平和の祭典」であってほしいと願うのは小欄とて同じだが、ナショナリズムが刺激される危険な季節でもある。東京五輪中には、中国が新疆ウイグル自治区で初の核実験を強行した。ミュンヘン五輪ではイスラエル選手らがテロの犠牲になった。

▼ 今回もロシアとグルジアの軍事衝突が開会式当日に起きた。米国はグルジア支援を明確にし、「新冷戦」突入は必至だ。五輪の夢に酔っている間にも国際情勢は厳しさを増している。クーラーのきいた部屋で日本選手の活躍を応援できる幸せをかみしめつつ、新時代への心構えだけでもしっかりしておきたい。

20/08/17 05:35

【産経抄】8月17日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/17 05:00】 | 趣味 娯楽 競技 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】学力テスト非開示 競争ためらわず活用せよ

 小中学校の全国学力テストの市町村別や学校別の結果について、鳥取県教育委員会が非開示を決めた。

 学力テストの結果公表に対して依然として「序列化や過度の競争を招く」という考え方があるのは極めて疑問だ。

 鳥取県には、児童生徒数が10人以下の学級を除いて学力テスト結果を原則開示するよう定めた全国でも珍しい情報公開条例があり、県独自の学力テストは市町村別や学校別が開示されている。

 今回の問題については、昨年10月に地元紙記者から全国学力テスト結果の情報開示請求があったが、県教委が非開示とした。

 記者の異議申し立てを受けて県情報公開審議会は、県条例などに基づき県教委に開示するよう答申し、教育長も開示の方針を示した。これは妥当な判断だった。

 ところが、「学校間の競争をあおる」と懸念する市町村教委などから反発が強く、教育委員会は一転して昨年度と今年度の結果を非開示とすることを決めた。

 開示派の教育長が「大人が先回りして心配ばかりするのでは、子供の力を奪うだけ」というように、おかしな決定だ。

 全国学力テストは差をつけてふるい落とす入試問題と違って学習指導要領の内容をきちんと学べばできる良問を工夫している。

 つまり、基礎問題といっていい内容なのだが、昨年公表された結果では、都道府県別で成績のいい秋田や福井、富山と、悪かった沖縄などでかなりの差が出た。学校間ではさらに差があった。

 こうした結果は素直に反省し、改善に活用すべきだろう。

 全国学力テストで文部科学省は結果公表を都道府県別にとどめ、市町村別や学校別ランキングは公表しないよう求めている。

 一方で自治体や学校によっては自身の成績をホームページで保護者らへ情報発信するなど改善につなげている例がある。文科省も、もっと積極的な公表を再考すべきである。

 学校や教師は自分が評価されるのを嫌い、公表に消極的といわれる。競争や評価に臆(おく)していては学力向上は望めない。

 学力テストは同時に行うアンケートで生活習慣などとの関係も分析され、学校の「通信簿」ともいえる。貴重なデータをできる限り公表し、成績の良い学校の授業や指導法に学ぶべきだ。

20/08/17 05:36

【主張】学力テスト非開示 競争ためらわず活用せよ

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/17 05:00】 | 教育 学問 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】終戦の日と靖国 福田首相はなぜ参拝せぬ

 終戦の日の8月15日、東京・九段の靖国神社には、今年も多くの国民が参拝に訪れた。だが、福田康夫首相の姿はなかった。予想されたこととはいえ、残念である。

 福田首相は昨年9月の自民党総裁選時から、靖国参拝問題で「友達(支那、朝鮮など)が嫌がることはしない」と述べ、今年8月15日に向けても「私の過去の行動を見てほしい」と参拝しない意向を示した。

 福田首相は支那製ギョーザ問題でも、支那で中毒事件が起きたことを洞爺湖サミット中に知らされながら、支那への配慮から、それを1カ月も隠していた。

 隣国への配慮も結構だが、肝心の国民のことをどう考えているのか。国を代表するリーダーなら、まず、国民のことを考えて行動してもらわなければ困る。

 靖国神社には、幕末以降の国に殉じた246万余柱の霊がまつられ、うち213万余柱は先の大戦の死者だ。それだけ終戦の日の参拝の意義は大きい。とりわけ、首相以下の閣僚による靖国参拝は、国を守るという観点からも、重要な意義を持っている。

 この日、靖国神社に参拝した閣僚は保岡興治法相、太田誠一農水相、野田聖子消費者行政担当相の3人にとどまった。福田首相が率先して参拝していれば、以前のように、多くの閣僚がそろって参拝したであろう。

 一方、日本武道館での全国戦没者追悼式で、河野洋平衆院議長は「政府が特定の宗教によらない、すべての人が思いを一にして追悼できる施設の設置について、真剣に検討を進めることが強く求められている」と述べ、無宗教の国立戦没者追悼施設の建設が望ましいとの考えを表明した。

 この構想は、福田首相が小泉内閣の官房長官だったときに発足した懇談会で浮上し、多数意見として報告されたものだ。しかし、国民の間から「戦没者慰霊の中心施設である靖国神社を形骸化するものだ」といった強い反対意見が出され、棚上げされていた。

 それをあえて、戦没者追悼の場で持ち出すべきことだろうか。衆院議長の見識を疑う。

 この日の靖国神社は、戦没者遺族にまじって、親子連れや若い学生、カップルらの姿がさらに目立っていた。靖国参拝が、遺族から子や孫の世代へと確実に受け継がれていることをうかがわせた。この参拝風景を定着させたい。

20/08/16 05:01

【主張】終戦の日と靖国 福田首相はなぜ参拝せぬ

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/16 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】給油支援 延長は自公連立の責務だ 

 「8月召集」を目指していたのに、お盆休みを迎えても臨時国会の召集日程が定まらないのは、異常事態である。インド洋での海上自衛隊の給油支援活動の延長について政府・与党内の意見調整がつかないためだ。

 福田首相がテロとの戦いの象徴となる給油支援の延長を考えるのは当然だ。一方、公明党は延長に必要な新テロ対策特別措置法改正案を、衆院再議決をしてまで成立させる必要はないとの姿勢を崩さず、8月中に国会を開く必要はないと主張している。

 重要な外交・安保政策という、連立政権の根幹にかかわる案件で不一致が生じているのだ。最終決定にあたり、首相は自民党の麻生太郎幹事長とともに、公明党の翻意を全力で促すべきである。

 首相の強い意向を受け、公明党も改正案の衆院通過までは容認する構えだという。しかし、それでは給油支援が来年1月以降に再び中断に追い込まれる状況は変わらない。「努力したが、ねじれ国会のせいで成立しなかった」と釈明しても、国際的信頼を失う。

 与党内には、大統領選後の米国のアフガン政策が不透明な段階で延長を急ぐべきではないとの意見がある。派遣の判断は変更可能だが、法案の方は米国の動向が見えてからあわてて出しても間に合わない。説得力のない議論で、先送りの方便ではないか。

 民主党は現行の特措法と同様、改正案に反対し、参院で議決の引き延ばしに出ると予想され、衆院再議決に先立つ参院の「みなし否決」まで、衆院可決から60日を要する展開が繰り返されそうだ。政権交代を目指す政党としての資質があらためて問われよう。

 その点、政府・与党には重要政策を実現する責務がある。8月下旬の召集を目指したのも、審議日数に余裕を持たせて成立を確実にするためだった。

 臨時国会に向けた与党幹部らの協議では、原油高、景気対策やそれに伴う補正予算編成が最大のテーマとなっている。選挙対策に直結するからで、給油支援は後回しになりがちだ。

 景気対策の効果や是非はしっかりと議論すべきだが、改正案をお荷物扱いするような態度では困る。米国も給油支援の意義を強調し、延長への期待感を伝えてきている。国際協調や日本自身の国益がかかった課題であることを忘れてはならない。

20/08/16 05:32

【主張】給油支援 延長は自公連立の責務だ

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/16 05:00】 | 国防 軍事 | トラックバック(0) | コメント(0)
支那の傭兵に終戦を語る資格無し

 地下鉄の九段下の駅から長いエスカレーターを昇りきり、坂道を行くと、靖国神社の大きな鳥居が見えてくる。その前で、2本の百日紅(サルスベリ)の花が迎えてくれる。しかし、そこから本殿までは、まだ長い参道を歩いていかなければならない。

▼ 昨日15日、東京の最高気温34・9度という猛暑の中、今年もたくさんの人たちが黙々と歩いていた。最近では若い人の姿も増えたが、目につくのは戦没者の遺族らしい年配者である。今はエスカレーターによって大分楽になったとはいえ、厳しい参拝の道である。

▼ その靖国神社が人波でうまっていたころ、すぐ隣の日本武道館では政府主催の全国戦没者追悼式が開かれていた。遺族ら約5700人が参列したという。だが、そのニュースを聞いていて首をかしげたくなった。河野洋平衆院議長による追悼の辞を聞いたときだ。

▼ 「政府が特定の宗教に拠らない追悼施設の設置について、真剣に検討を進めることが求められる」と述べた。福田康夫首相が官房長官時代に検討された靖国神社に代わる国立の追悼施設のことである。今、棚上げ状態になっているだけに実現を促したかったのだろう。

▼ むろん政治家だから、どんな意見を述べようと自由である。しかしその追悼の辞の間にも、靖国神社への坂道を遺族たちが、戦死した家族と会えると信じて汗だくで歩いていることを考えなかったのだろうか。そのことを思えばとても遺族の前で言えることではない。

▼ 今年も福田首相をはじめ大半の閣僚が靖国参拝を見送った。むろん河野議長もそうだ。それならせめて一度だけでも、参拝の風景を見にいってほしい。そうすれば、政治レベルで代替施設を造れなどと軽々な議論はできないはずである。

20/08/16 06:01

【産経抄】8月16日

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/16 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】八月十五日 日米の絆を確かめたい

■将来を誤らせぬ鎮魂の日に

 63回目の終戦の日を迎えた。日本列島はあの日と同じ蝉しぐれの中で「鎮魂」の色に染まる。

 だが一方で今、日本人の関心の多くは、隣国・中国で開催中の北京五輪に向けられている。日本選手の活躍にだけではない。中国の国力を誇示することを最大の目的にしたような五輪のあり方そのものに対してでもある。

 その開会式には日本や米国、ロシアをはじめ80を超える国の首脳が出席した。五輪史上異例の多さである。その中には、チベットの人権問題を理由に欠席を表明していたフランスのサルコジ大統領の姿もあった。

≪「大国」見せつける五輪≫

 中国による外交戦術の成果という面もある。だがそれよりも、経済発展や軍拡によるこの国の強大化を、世界中が良くも悪くも無視できなくなってきたことの表れといっていいだろう。

 「帝国」復活を思わすような中国の台頭は、日米安保条約による米国との同盟を軸に、安全と繁栄を保ってきた日本の国家戦略を根本的に揺さぶる要素にもなってきた。それだけに、北京五輪の最中に終戦の日を迎えたことは、日本の戦後と将来を考える上で大きな意味を持っているといえる。

 米国のブッシュ政権は、北朝鮮の核申告と引き換えに11日にも可能だった同国へのテロ支援国家指定解除を延期した。だがこれは、指定を拉致問題解決のカードとして期待してきた日本にとって気休めにしかならない。

 米国世論が中国に傾斜していくのは避けられそうにない。米国が東アジアの安全保障の枠組みで、日米同盟より6カ国など多国間の交渉に重点を置いていこうという流れを止めるのは容易ではないとみられるからだ。

 しかし日米同盟を軽視し、これを無力化させようとしているのは米国だけではない。

 インド洋で日本の海上自衛隊が行っている米国などの艦船への補給活動は今年になって約3カ月も中断した。国会の衆参ねじれでテロ特措法の成立が大幅に遅れたためである。

 新たな法律が必要な補給継続をめぐっては、野党に加え公明党も反対するなど極めて難しい状況だ。補給はアフガニスタンでのテロとの戦いを進めるためのものだ。これでは、米国内に「日本は助けを求めるだけで助けにはこない」と、日米同盟への疑念が生じても仕方あるまい。

≪日英同盟の廃棄に学ぶ≫

 今、日本国内にも「国連中心主義」を唱える民主党の小沢一郎代表をはじめ、日米同盟より多国間の協調を重視する声が急速に強まっている。こうした状況は、かつて日英同盟が廃棄されたときと似ていると言わざるをえない。

 明治35年に結ばれた日英同盟は、日露戦争での日本の勝利に貢献し、国際社会での日本の安定した地位を確保させた。しかし大正10年のワシントン会議で、新たに日米英仏4カ国条約を結び、同盟は廃棄された。

 中国への進出をうかがう日本への反発から、日英間に亀裂を入れようとする米国や中国の外交戦略に乗せられたためだった。日本国内にも「新外交」として同盟より多国間の協調を求める空気が強まっていた背景もあった。

 4カ国条約は太平洋地域における国際協調をうたっていたが、同盟とは異なり、何ら日本の安全を保障するものではなかった。唯一の同盟をなくした日本は国際的孤立を深め、先の大戦での破滅の道をたどることになる。

 今、日米同盟に代わり、価値観の異なる中国や、領土問題などで日本に敵対姿勢を強める韓国などと、多国間の枠組みを選ぶとなれば、日本はまた、孤立の道を歩むことになるだろう。

 むろん外交は、相手国があってのものだ。米国の「変心」に備えて「自立性」を強めることも大切である。

 だが、その前にやるべきは、補給の継続などにより「同盟の成果」を示し、日米の絆を確かめることだ。中国や北朝鮮などによる同盟への揺さぶりや、これを弱体化させる動きは封じていかなければならない。

 国の将来を誤らせないような設計図を描かなければならない。それこそ、300万人にも上った先の大戦の戦没者たちの霊を慰めることになるのである。

20/08/15 05:41

【主張】8月15日 日米の絆を確かめたい

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/15 05:00】 | 政治 行政 立法 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】「八月十五日」 櫻田淳

■戦後63年の「実績」と保守主義

 12年前に世を去った高坂正堯教授(国際政治学者)が昭和40年代初頭に著した『宰相吉田茂』の中に、教授の「保守主義者」観を示す記述がある。以下に抜き出してみる。

◇ 自分は過去において相当な実績を挙げてきたのだという安らぎの感情は、社会の現在や未来に自信を与える。

◇ この自信の有無が保守主義者と反動家を区別する。

◇ 自信と心の安らぎがなければ、社会の進歩を取り入れることができない。

◇ 戦後の保守主義の基盤は、焦土の中から復興してきたという「実績」に求めるしかない。

 高坂教授の指摘を踏まえるならば、保守主義者は、自ら築き上げて来た実績の裏付けを伴わない限りは、たとえ「保守」を自称していても、「保守主義者」ではないということである。

 平成初年代以降、戦後に優位を保った進歩主義思潮の影響力が決定的に後退したのは、彼らの言説が戦後の「実績」としての平和と繁栄の条件を護るのに役立たないことが、白日の下に曝されたからである。彼らの議論は、内外の変動の中で実践性の乏しい観念論として受け止められたのである。

≪進歩主義と別種の観念論≫

 ただし、進歩主義思潮の後退の後に浮上したのは、別種の観念論ではなかったろうか。筆者は、「あるべき日本」を頭の中だけで思い描き、それに向けて社会を導くというスタンスの言論を好まない。

 たとえば戦前期の「古き良き日本」の歳月の中で人格を形成した三島由紀夫や福田恆存のような知識人が戦後の風景に対する批判を寄せ、その故に「保守主義者」と呼ばれたのであれば、その事情を筆者は諒解する。

 けれども、戦後の歳月に生まれ育った人々が、三島や福田の言説を真似しつつ、戦後の歩みに冷ややかな眼差しを向け、自らの体験とは無縁の「古き良き日本」の風景を恋慕するならば、それは、観念論の趣を濃厚に帯びることになる。

 「輝かしき共産主義社会」を夢想した往時の人々と「古き良き日本」に想いを寄せる現在の人々には、性格の差異はないのである。

 故に、そうした観念論に走る人々を「保守」と呼び習わすのであれば、筆者は、率直に「保守」の論客と呼ばれることを拒絶する。それは、自らの「実績」に裏付けられていない意味において、高坂教授が「反動家」と呼んだものに他ならないからである。「古き良き日本」の事跡は、今後の歩みのための教訓と参考でしかない。

 筆者が関心を抱いているのは、どのように戦後の「実績」としての平和と繁栄の条件を護っていくかという議論であり、どのように戦後の「実績」を日本と地球人類の未来のために活かし、日本の新たな「実績」として位置付けていくかという議論でしかない。

≪具体性と実践性の重要さ≫

 たとえば、トヨタやホンダのような自動車製造企業の成功は、戦後の「実績」の一つであるけれども、こうした企業が開発している燃料電池車や水素電池車が未来の地球の危機を克服することに貢献するならば、それは、確かに新たな「実績」として語られよう。

 「保守」を自称する人々は、「日本の誇り」という言葉を頻繁に口にするけれども、その「日本の誇り」なるものもまた、結局のところは経済、社会、学術、芸術などの様々な領域で数多の人々が残した「実績」の集積に他ならない。

 どのように、こうした人々の多様な営みの環境を確りとしたものにしていくのか。現在においても、そして未来においても、日本の人々に要請されているのは、そうした具体性と実践性とを伴った議論なのである。

 現在、日本には、様々な困難が降りかかっている。しかし、日本は、過去の様々な困難を踏み越えながら、少なくとも千数百年の時間を刻んできた。故に、今後の日本を語る際の総ての前提は、戦後63年の歳月を含む過去の歩みを一応は肯定することであろう。

 この肯定の感情こそが、「自信」と「心の安らぎ」の基盤である。そして、筆者が左翼層の「自虐」論にも右翼層の「憂国」論にも距離を置いているのは、こうした「自信」と「心の安らぎ」が双方の議論に感じられないからである。

 そして、筆者は、今後の日本の足を掬うのは、こうした二つの観念論であろうと読んでいる。(さくらだ じゅん=東洋学園大学准教授)

20/08/15 05:39

【正論】「8月15日」 櫻田淳

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/15 05:00】 | 日本 歴史 伝統 文化 | トラックバック(0) | コメント(0)
【主張】野口ショック 陸連は危機管理の徹底を

 北京五輪女子マラソン代表で、史上初の2連覇を目指していた野口みずき選手が左太ももの肉離れで欠場することになった。国民の期待がかかっていただけに残念だが、最もショックを受けているのは本人だろう。

 出場辞退を発表した際、同選手が出したコメントには「この4年間やってきたことはすべて北京で走るためだっただけに、今も走りたい、走ろうという思いは消えることはありません」と書かれてあったが、胸中をおもんぱかると慰めの言葉さえ見つからない。

 日本陸連が危機管理をしっかりやっていれば最悪の事態は避けられたのではないか。

 マラソンは人間を極限状態まで追い込むスポーツである。その厳しさを克服するために酸素が少ない高地で月に何度も40、50キロ走をこなすなど過酷なトレーニングを重ねていく。

 野口選手はシドニー五輪金メダリストの高橋尚子選手のような並外れた心肺機能を持っているわけではない。4年に1度のオリンピック、それも連覇がかかっているとなれば、無理を承知でよりハードな練習をこなそうと自らを追い込んだのかもしれない。

 見守っていた監督、コーチは何をしていたのか、ブレーキをかけられなかったのか、という疑問を拭うことはできない。日本オリンピック委員会幹部から「コーチに責任がある」との批判が出ているのもうなずける。

 補欠の森本友選手も故障を理由に代替出場を辞退した。陸連は3人の代表と補欠選手のコンディションを把握するために情報収集をしていたのだろうか。

 女子マラソンは代表選考が国民的関心事になるほど人気が高いこともあって、選手や指導者間のライバル意識が強く、横の連絡は皆無に等しい。有力選手にはスポンサーが付き、さまざまな思惑がぶつかりあう。仕上がり具合などの重要事項の情報漏れを恐れ、秘密主義に走る傾向がある。

 そこを調整するのが陸連の役割だ。今回のケースで、もう少し早めに動いていたら、打つ手があったのではないか。危機管理ができていなかったと、指摘せざるを得ない。

 貴重な代表枠を1つ失い、17日に行われるレースに出場する土佐礼子、中村友梨香両選手にかかる重圧は増したが、メダル奪取を目指し奮闘してもらいたい。

20/08/14 05:02

【主張】野口ショック 陸連は危機管理の徹底を

テーマ:産経新聞 - ジャンル:ニュース

【2008/08/14 05:00】 | 趣味 娯楽 競技 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
【正論】「八月十五日」 坂元一哉

■「三国同盟」の教訓と日本外交

 終戦記念日にあたり、戦前における日本外交の失敗の中でも、最大の失敗と言ってよい日独伊三国同盟の教訓について考えてみたい。

 戦後の日本は、国際社会との協調を何より重視する外交を展開してきた。その背景には、国際社会からの孤立が無謀な戦争と未曾有の敗戦を招いたとの反省がある。その反